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掲載日:2016年4月1日

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普及に移す技術第89号/普及技術(震災関連)1

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普及技術(平成25年度)

分類名〔水稲〕

 津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除対策(追補) - 震災復興関連技術 -

津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除対策(追補) - 震災復興関連技術 -(PDF:296KB)

宮城県古川農業試験場

1 取り上げた理由

宮城県沿岸部の農地には,耐塩性が高く塊茎による繁殖能力が高い水稲作の難防除雑草コウキヤガラが震災前から多発していた。東日本大震災の津波被害を受けたこれらの地域では復旧までの休耕期間にコウキヤガラが増殖し,復旧後の水稲作に影響を及ぼしている。そこで,前回の普及に移す技術「津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除対策(第88号普及技術)」および「津波被災農地における雑草植生変化とコウキヤガラ発生リスクマップ(第88号参考資料)」において,コウキヤガラに有効な防除対策と同種発生の地理的なリスクの予測結果について緊急に報告した。その後の継続試験・調査の結果も踏まえて,体系的な防除対策の指針が明らかとなったので普及技術(追補)とする。

2 普及技術

  • 1)コウキヤガラに対してはピラクロニルやアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤を有効成分に含む水稲用除草剤の効果が高い。特に,ピリミスルファン0.75%粒剤やメタゾスルフロン含有剤は草丈30cmのコウキヤガラにも高い防除効果を示す(表1)。
  • 2)土壌塩分濃度が高い砂質土壌でもコウキヤガラ登録と砂壌土適用をもつ水稲用除草剤の防除効果は高く,コウキヤガラ茎葉および塊茎生産を強く抑制し(図1),水稲に対する薬害もない。
  • 3)コウキヤガラが繁茂した休耕田では,6月下旬までにグリホサートカリウム塩を茎葉散布することで,当年の塊茎は生産されるものの,翌年の萌芽は抑制される(図2)。
  • 4)コウキヤガラが繁茂した被災休耕田において,作土を移動したりプラウにより反転耕することで,作土表層の塊茎数が減耗するが,ロータリ耕や早春期の篩分けだけでは塊茎を除去できない(表2)。
  • 5)震災直後から継続調査している被災圃場の雑草植生の変化をみると,水稲作付けの回復に伴い,コウキヤガラの発生頻度は低下しているが,未復旧休耕田を中心に今年度新規に調査した地点では高い頻度でコウキヤガラの発生が認められる(表3)。被災後2カ年の調査を基に作成したコウキヤガラ発生リスクマップ(普及に移す技術88号参考資料2)においてリスクランク3・4と試算された地域ではモデルで予測した高い頻度でコウキヤガラが確認される(図3)。
  • 6)以上から,復旧前後の被災農地では、図4のフローに従って体系的にコウキヤガラに対する対策を実施する。
    • a コウキヤガラ発生リスクマップを基に,事前に管理対象地域のコウキヤガラの発生リスクを把握し,対策の必要性を判断する。
    • b 復旧水稲作付け圃場ではコウキヤガラに有効な除草剤および体系処理を選択することが重要であり,イネへの安全性を確保するため砂質土壌では砂壌土登録のある除草剤を使用する。
    • c 未復旧休耕田でのコウキヤガラ対策としては除草剤による防除が効果的であり,グリホサートカリウム塩液剤を6月末までに散布することで翌年の萌芽を抑制することが出来る。地上防除が困難な場合には平成26年度までであれば無人ヘリによる散布も可能であるので,実施を希望する場合は指導機関に相談する。
    • d 復旧工事において瓦礫除去に用いられた自走式スクリーン等によるコウキヤガラ株の物理的篩い分けも有効と考えられるが,塊茎が株に連結している夏季までに20mm以下の篩目で作土を篩う必要がある。コウキヤガラの発生した作土を移動したりプラウにより反転することも作土域の塊茎数の低減には有効であるが,塊茎が死滅するわけでなくコウキヤガラ発生域の拡散につながる場合もあるので注意が必要である。

3 利活用の留意点

  • 1)普及対象はコウキヤガラ発生地帯の耕作者,被災農地管理者,復旧事業者である
  • 2)水稲作では適用雑草名として「コウキヤガラ」に登録のある除草剤,休耕田では適用場所として「休耕田」に登録のある除草剤を使用する。
  • 3)水稲作付け時には,丁寧に代掻きをして萌芽個体を埋没させ移植後の株の再生を抑制する。
  • 4)前年からの休耕田では,4月上旬に萌芽が始まり,5月上旬には出芽が揃い茎葉処理剤による防除適期となる。
  • 5)コウキヤガラの多発した圃場の堆積土砂等を盛り土や客土に用いた場合に,新たにコウキヤガラの多発源として問題となる場合があるので注意が必要である。

(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部 電話0229-26-5106)

4 背景となった主要な試験研究

  • 1)研究課題名及び研究期間
    • a 水稲関係除草剤適用性試験(平成24~25年度)
    • b 津波被災水田の実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立(平成23~25年度)
    • c 食料生産地域再生のための先端技術展開事業(平成24~25年度)
  • 2)参考データ
    表1 各種水稲用除草剤によるコウキヤガラの防除
    各種水稲用除草剤によるコウキヤガラの防除一覧表
    砂質土壌塩分存在下での稲用除草剤のコウキヤガラに対する防除効果の比較グラフ
    図1 砂質土壌塩分存在下での稲用除草剤のコウキヤガラに対する防除効果の比較(ポット試験)
    復旧前休耕田におけるコウキヤガラに対する各防除法・処理時期の効果のグラフ
    図2 復旧前休耕田におけるコウキヤガラに対する各防除法・処理時期の効果
    表2 被災休耕田コウキヤガラ塊茎の残存状況
    被災休耕田コウキヤガラ塊茎の残存状況表
    表3 津波被災水田の雑草植生の変化(発生地点率%)
    津波被災水田の雑草植生の変化一覧表
    コウキヤガラ発生リスクマップの制度検証のグラフ
    図3 コウキヤガラ発生リスクマップの精度検証
    コウキヤガラの対策フロー図
    図4 コウキヤガラの対策フロー
  • 3)発表論文等
    • a 関連する普及に移す技術
      • a)津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除対策(第88号普及技術)
      • b)新規褐変剤ピラクロニルによる難防除雑草コウキヤガラ対策(第86号参考資料)
      • c)津波被災農地における雑草植生変化とコウキヤガラ発生リスクマップ(第88号参考資料)
    • b その他
      • a)Shigenori OKAWA(2013),Vegetation changes and weeds management of farmland after the Tsunami of Great East JapanEarthquake in Miyagi Prefecture,24th Asian-Pacific Weed Science Society Conference
      • b)大川茂範・安藤慎一朗・北川誉紘・浅井元朗(2013),宮城県の津波被災農地における雑草植生の変化とコウキヤガラ発生リスクマップの作成,雑草研究58巻(別),p77
      • c)大川茂範・北川誉紘・安藤慎一朗・石橋まゆ・内海翔太(2013),宮城県の津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除法,雑草研究58巻(別),p78

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