普及に移す技術第89号/参考資料8
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参考資料(平成25年度)
分類名〔畑・特用作物〕
難防除雑草アレチウリの水田地帯における分布実態
難防除雑草アレチウリの水田地帯における分布実態(PDF:381KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
宮城県の水田転作を中心とする大豆作圃場では,環境省が特定外来生物に指定する難防除雑草アレチウリ(ウリ科)の発生が見られ,圃場によっては収穫皆無となる甚大な被害を及ぼしている。アレチウリが一度圃場内に蔓延してしまうと有効な防除手段が現状では無く,大豆作付けの継続も困難となるため,未然に外部からの侵入を防ぐことが非常に重要である。そこで,平成21年から25年にかけて県内全域を巡回調査し,水田地帯におけるアレチウリの分布実態を明らかにしたので参考資料とする。
2 参考資料
- 1)宮城県内水田地帯の巡回調査ではアレチウリは河川敷・堤防に多くみられるが,大豆作付け中の圃場内への侵入も確認されている。圃場内侵入の事例は限られているが,圃場に面した農道法面や用排水路周辺での確認件数は河川敷・堤防に次いで多い(図1)。
- 2)アレチウリは県内を流れる河川・広域水路沿いを中心に,中上流域から沿岸部まで広く分布している(図2)。全域で河川敷や堤防での発生が目立つが,中下流域では水田に接する農道法面や用排水路周辺での発生も多く,圃場内への侵入も確認される。
- 3)垂直分布は標高10m付近で最も多く,100m以上でも一定の発生がある(図3)。また,河川・広域用排水路から水平方向への分布はおよそ1,000mまであり,圃場内侵入が見られるのは400m付近までである。河川から離れた地域では農道法面や用排水路周辺での分布が多い。
- 4)前作からアレチウリが目立ち始めてきた大豆作圃場の事例では,慣行の除草剤と手取りによる防除を行っていても,9月上旬には大豆を覆い隠すほどにアレチウリが繁茂した(図4)。
- 5)以上より,農道法面や用排水路周辺が,河川から圃場までの侵入経路となっている可能性が高く,農外施設の敷地や農道に面した山林も分布拡大の中継地になりうると考えられる。圃場内に侵入した場合は急激に拡大し,蔓延した圃場での有効な防除法は確立されていないため,圃場内への侵入を防ぐ農地周辺の管理が予防対策として重要である。農道や用排水路周辺にアレチウリを見かけた場合には,圃場への侵入源とならないように,繁茂・拡大する前に抜き取り防除する。
図1 アレチウリ発生場所別の確認地点数
3 利活用の留意点
- 1)本調査は宮城県内全域を対象とした水田雑草調査において,経路上に確認されたアレチウリ発生地点を逐次GPS付カメラ等で記録し,主に画像の判別により発生場所の区別を行ったものである。ただし,確認地点以外の地域にアレチウリが存在しないことを示すものではない。
- 2)「特定外来生物による生態系に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」によりアレチウリを保管及び運搬することは原則禁止されているので,生存株や結実種子の拡散がおきないように発生場所において処分する。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部 電話0229-26-5106)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
- a「環境保全型水稲栽培の推進に向けたIWMの実践支援」(平成21~23年度)
- b「大規模水田農業地帯における総合的雑草管理システムの構築」(平成24~25年度)
- 2)参考データ
図2 アレチウリ確認地点の分布と発生場所
図3 アレチウリ確認地点の垂直・水平分布
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術 なし
- b その他
- a)大川茂範・安藤慎一朗(2014),宮城県の農耕地周辺におけるアレチウリ(Sicyos angulatus)の分布,第61回日本生態学会大会ポスター発表
- b)安藤慎一朗・辻本淳一・大川茂範(2012),宮城県の水田地帯におけるアレチウリの発生状況と大豆作圃場での発生生態,雑草研究57号(別),p38
- c)平智文・大川茂範(2010),宮城県におけるアレチウリの確認状況について(外来雑草問題研究会),雑草研究第55巻2号,p116-117
写真 アレチウリの果実および葉身
図4 アレチウリの侵入した大豆作圃場
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