普及に移す技術第87号/参考資料3
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参考資料(平成23年度)
分類名〔水稲〕
地理的要因を基にした水田雑草多発リスクの評価
地理的要因を基にした水田雑草多発リスクの評価(PDF:397KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
近年,イヌビエ,オモダカ,イヌホタルイそしてクログワイといった特定雑草種が目立つ地域が多く,広域的な防除対策立案のためにも,地域毎の問題雑草種の発生傾向を把握することが重要となっている。そこで,宮城県内全域を対象とした水田雑草発生状況調査の分布特性を既存の地理情報システム(GIS)を基に解析したところ,イヌビエ・クログワイについては任意地点における多発リスクを予測・評価可能であることが明らかとなったため参考資料とする。
2 参考資料
- 1)各水田雑草種の多発圃場の分布は,標高が低い地域に多い低地型(イヌビエ・ウキヤガラ),低地でかつ河川に近い河口型(ミズアオイ・コウキヤガラ),低地から高地まで河川近くに分布する河川近傍型(タイヌビエ・オモダカ)等,その標高と主要河川からの距離により類型化することができる(図1)。
- 2)上記の地理的要因に,対象圃場が含まれる1km2メッシュ内の最大傾斜度,土壌分類,そして直近の多発圃場からの距離を説明変数として加えたロジスティック回帰モデルにより,任意地点の草種別多発確率を算出し,雑草多発のリスクマップを描画できる(図2)。
- 3)イヌビエ・クログワイについて,このロジステック回帰モデルにより試算した多発リスクと実測の多発地点率には正の相関が認められ,各地域のリスク評価に利用することができる(図3)。
3 利活用の留意点
- 1)平成19~21年にかけて宮城県内の各農業改良普及センターから報告のあった,特定の雑草種の多発により収量被害の予測された水稲作付圃場,および,各報告地点の巡回経路上で発見された特定雑草種の多発圃場(合計413地点)をリスク評価の対象として解析した。
- 2)イヌビエ・クログワイのリスクマップは下記問い合わせ先への申込みにより,kml, shp形式で提供可能である。
(問い合わせ先:古川農業試験場試験場水田利用部 電話0229-26-5106)
4 背景となった主要な試験研究
図2 イヌビエおよびクログワイの多発リスクマップ
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
環境保全型水稲栽培の推進に向けたIWMの実践支援 平成21~23年
- 2)参考データ
図1 草種別多発圃場の標高と主要河川からの距離の関係
図2 イヌビエおよびクログワイの多発リスクマップ
図3 別多発リスクの試算評価ランクと実測の多発地点率
- 3)発表論文等
- 大川茂範ら(2009).宮城県の水稲栽培圃場における難防除雑草の発生状況 - 草種別の多発要因について - .雑草研究54(別)p62.
- 大川茂範・平智文(2010).宮城県の水稲栽培圃場における難防除雑草の多発要因 - 圃場管理履歴を基にした解析 - .雑草研究55(別)p42.
- 大川茂範(2011).宮城県の水稲栽培圃場における難防除雑草の多発要因 - 地理的要因に基づくリスクマップの作成 - .雑草研究56(別)p77.
- 大川茂範(2012).宮城県の水稲栽培圃場における難防除雑草の多発要因 - リスクマップの精度検証 - .雑草研究57(別)印刷中.
- Shigenori OKAWA(2011).23rd Asina-Pacific Weed Science Society Conference(第23回アジア太平洋雑草学会). Risk Assessment of Problematic Weeds Outbreak at Paddy Field in Miyagi Prefecture.Book of Abstracts p38.
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