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平成30年(2018年)は、明治元年(1868年)から満150年の年に当たります。
明治以降、近代国民国家への第一歩を踏み出した日本は、明治期において多岐にわたる近代化への取組を行い、国の基本的な形を築き上げていきました。
宮城県の農業・農村を支える農業水利施設についても、明治時代に整備された施設が多数あります。
今回は、明治期に整備された「角田上水(坪石幹線用水路)」と「品井沼干拓(元禄潜穴・明治潜穴)」のその歴史について簡単にご紹介いたします。
角田隈西地域のかんがい用水は、西南部に築造された大沼、舟沼などの七つの沼により供給されていましたが、用水量が不十分なため、藩政時代より阿武隈川からの取水が検討されていました。
この計画は時間もお金もかかることから、なかなか実現に至っていませんでしたが、高山善右衛門の熱意により明治39年(1906年)に工事が開始され、館矢間村姥石からの延長5.5kmに及ぶ水路の掘削が始まり、翌明治40年に完成しました。
その後、この地域は水を湛えた豊かな水田が広がり、この地域の暮らしも豊かになりました。このことから、地域の人は、高山善右衛門を「上水翁」と呼んで敬愛しています。
写真:高山上水翁の像(江尻排水ポンプ展示館)
位置図:坪石幹線用水路(赤線)とその受益地(赤塗)
角田上水は現在、「坪石幹線用水路」として角田市隈西地区の約3割の水田を潤す農業用水が流れる大動脈となっています。
水路は、その後も整備が行われ、丸森町坪石を始点に丸森町舘矢間、角田市鱸沼をとおり、小田川を潜り、牛舘、寺前、横倉を経て笠島機場までの総延長11.6kmになります。途中、市街地を流下する軒下排水路(桜支線用水路)にも分水しています。
明治時代に整備された角田上水が今もなお、角田市の農業を支えています。
写真:坪石幹線用水路(左)、坪石揚水機場(右)
毎年4月末に水土里ネットかくだ(あぶくま川水系角田地区土地改良区)主催で「水土里の路ウォーキング」が開催されています。
角田駅前から江尻ポンプ展示場、スペースタワーコスモハウス、軒下排水路(桜支線用水路)、角田市郷土資料館を巡り、農業と水という視点からみた角田市の歴史への理解を深めることができます。
写真:水土里の路ウォーキング「高山善右衛門」像前にて(左)、軒下排水路(桜幹線用水路)(右)
詳細は以下ホームページをご覧下さい。
品井沼周辺は大雨が降ると吉田川などから、多くの水が流れ込み、大洪水に見舞われていました。江戸時代の新田開発により、元禄潜穴というトンネルを掘り、沼の水を松島湾に流す方法がとられました。
その後の長い歳月の間に排水路が詰まり、明治時代になると、流れはさらに悪くなり、大雨が降るたびに水害に見舞われ、人々は貧しい暮らしに耐えていました。
品井沼を干拓するために、元禄潜穴に加え、明治潜穴の計画がたてられ、明治39年工事が着工しましたが、落盤事故や、大雨による工事中断、物価の高騰などが続き、工事続行に反対する人が増え、工事推進派と中止派が対立していきました。
この工事推進派と中止派の仲裁にあたったのが、祖父の代から品井沼干拓に注力していた鎌田家の鎌田三之助でした。
鎌田三之助はその誠意と熱意で一人一人反対派を説得し、工事を続け、明治43年、明治潜穴と排水路を完成することができました。
その後、鎌田三之助は、村人の強い要請に答え、村長に就任。品井沼干拓事業や村財政の建て直しに尽力しました。
在任中は維勤維倹を哲学とし、どこへ行くときもツギハギだらけの粗末な衣服、わらじ脚絆で、村民から「わらじ村長」と呼ばれ親しまれていました。
写真:鎌田三之助の像(鹿島台小学校入り口)
位置図:元禄潜穴と明治潜穴の位置図
その後、大正と昭和と河川堤防の改修や排水事業が実施され、荒れた湿地が水田に変っていきました。
『元禄潜穴』は,現在,松島町指定の文化財になっており,施設の保全を図るとともに,先人の遺業を公正に引き継いでいけるよう,平成16年度から地域用水環境整備事業/歴史的施設保全型を実施し,資料館等の施設整備を行いました。
元禄潜穴
また、『明治潜穴』は、幾多の先人達が品井沼干拓にかけた情熱と、水害との戦いの中で生まれた高城川の歴史を、後世に伝えるための公園として整備されています。
写真:明治潜穴(左)、元禄潜穴(右)
また、品井沼を含む大崎地域は、平成29年12月12日に国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産に認定されました。
わらじ村長で名を知れた「鎌田三之助」の展示室は、江戸時代から300年かかった品井沼の干拓事業を課題としたテーマミュージアムです。映画「鎌田三之助物語(20分)」の上映もあります。
品井沼干拓の歴史について松島町ホームページ
品井沼干拓の歴史(外部サイトへリンク)
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