普及に移す技術第92号/普及技術2
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普及技術(平成28年度)
分類名〔水稲〕
晩生で耐冷性に優れた飼料用米向け多収品種「東北211号」の栽培法
晩生で耐冷性に優れた飼料用米向け多収品種「東北211号」の栽培法(PDF:342KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
平成26年4月に本県の多収品種(知事特認品種)として認定された「東北211号」(普及に移す技術第91号)は,収量性及び耐冷性,耐倒伏性に優れ,玄米千粒重が大きく主食用米との識別性があり,飼料用米向け品種として期待されている。
常時被覆無かん水の簡易乳苗育苗技術(普及に移す技術第79号,第84号)で育苗した乳苗を移植し,多収穫(目標収量:粗玄米重720kg/10a)となる栽培法について検討した結果,収量構成要素の目安等が得られたので普及技術とする。
2 普及技術
- 1)10a当たりの目標収量を粗玄米重720kg以上とした場合,平方メートル当たり穂数は350~400本程度,平方メートル当たり籾数は31~37千粒程度で(図1,図2),収量構成要素の目安は表1のとおりである。
表1 目標収量及び週路湯構成要素の目安
- 2)目標収量(表1)が得られる生育量の目安(図3,図4)は,表2のとおりである。
表2 生育量の目安
- 3)10月下旬の倒伏程度が高くなく目標収量が得られる施肥法は,基肥が「ひとめぼれ」の1.4倍の10a当たり窒素成分量で7kg程度(図5),追肥が10a当たり窒素成分量で減数分裂期に4kg程度である(図6)。
- 4)たい肥を1トン程度春施用することで,化成肥料の基肥を10a当たり窒素成分量で2kg程度減量できる(図7)。
- 5)移植苗箱数は,10a当たり移植苗箱数を18箱と想定した「稚苗」に比べ,「乳苗」移植とすることで8割程度に,「乳苗・疎植」とすることで6~7割程度に減らすことが可能である(表3)。
- 6)成熟期(平成26~28年の平均:10月5日)頃の籾水分は29%前後と高く,コンバイン収穫が可能となる籾水分25%程度の刈取早限は,倒伏程度が高いほ場を除き,出穂期以降の積算平均気温が1,200~1,260℃の頃(出穂期後61~66日頃)である(図8)。
- 7)刈取晩限としては,安定的に籾水分が低下する10月下旬頃が目安となるが(図8),倒伏や脱粒,鳥害,穂発芽等を考慮し遅くならないように収穫する。
3 利活用の留意点
- 1)栽培に当たっては,「飼料用米栽培マニュアル(平成29年3月:宮城県)」を利用する。
- 2)病害虫の発生状況に注意し適正防除に努める。
- 3)「東北211号」は,千籾重が約33gと「ひとめぼれ」の約1.2倍の大粒品種であることから,播種前に使用する播種機での可能播種量を確認する。
- 4)無加温出芽でも育苗日数13日程度で,乳苗の目標草丈(8~12cm)が確保できる。
- 5)たい肥を春施用することで,化成肥料中の窒素やリン酸,カリの一部又は全部の代替や安価な肥料への切り替えが可能であるが,たい肥の施用に当たっては,普及に移す技術第82号,第85号を参考に施用量を算出する。
- 6)栽植密度は,平方メートル当たり18.5株(60株/坪)程度が安定的に多収となるが,平方メートル当たり13.8株(45株/坪)程度の疎植栽培とした場合でも,収量及び倒伏程度は大差なく多収栽培が可能である。
- 7)落水時期は,良好な登熟を得るため出穂期後40日頃を目安とする。その間,地域の水利やほ場条件,稲の倒伏程度,気象等を考慮し可能な範囲でほ場を湛水又は湿潤状態に保つ。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部電話0229-26-5106)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
飼料用米の省力低コスト多収栽培技術の確立(平成26~28年度)
- 2)参考データ
図1 平方メートル当たり籾数と収量,倒伏程度の関係
図2 平方メートル当たり穂数と籾数の関係
図3 草丈及び茎数の推移
図4 葉数及び葉色の推移
図5 基肥量と収量,倒伏程度の関係
図6 年次別追肥時期と収量の関係
図7 たい肥活用と収量の関係
表3 移植苗箱数
図8 立毛中の籾水分の推移
- 3)発表論文等
- a関連する普及に移す技術
- a)耐冷性に優れ大粒で飼料用米向けの多収性専用品種「東北211号」(第91号普及技術)
- bその他
- a)平成26年度東北農業研究成果情報
- b)佐藤浩子・遠藤貴司・佐伯研一・中込佑介(2015),耐冷性に優れる多収の水稲新品種
「東北211号」の特性,東北農業研究第68号,p11-12
- 4)共同研究機関なし
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