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(独)九州・沖縄農業研究センター久留米研究拠点(旧 野菜・茶業試験場 久留米支場)で開発された技術で、チューブに冷水や温水を流してイチゴのクラウン(株元)だけを直接冷やしたり、暖める技術です。
図1 クラウン冷却効果のイメージ
クラウンを冷却すると果実が大きくなります。また、花芽分化が安定します。
図2 クラウン加温効果のイメージ
クラウンを暖めると草丈が伸び、葉が大きくなります。また、葉の展開が早くなり、それに伴って次の花房も早く出てきます。
図3 クラウン温度制御システムの概要
チラー(冷水をつくる)または16~18℃くらいの地下水
タンク、ポンプ、チューブなど
チラー(冷水をつくる)または16~18℃くらいの地下水(冷却用)
温湯ボイラー(温水をつくる)
タンク、ポンプ、チューブなど
ヒートポンプを利用すると冷水と温水両方をつくることができますが、気温が5℃以下に下がると凍結防止装置が働き運転が止まるので注意します。
写真1 所内試験で使用した小型チラー
注)チラー:水や液体の温度を管理しながら循環させる装置
クラウン冷却・加温用チューブは、ポリエチレンチューブを使用します。開発元の(独)九州・沖縄農業研究センターでは専用の2連チューブの使用を勧めていますが、ポリエチレンチューブでも同様の効果が得られますので、安価なポリエチレンチューブを使用します。
チューブは冷水や温水の温度をクラウン部に伝える重要なものですから、イチゴのクラウン部とチューブが接していることが必要です。定植時には糸を張ったり、線を引いてまっすぐに植えることやチューブを設置した後に割り箸やU字型の針金等で抑えることも必要です。また、写真ではチューブが露出していますが、チューブはマルチの下に設置してください。
写真2 2連チューブ
写真3 ポリエチレンチューブ
2連チューブは、行きと帰りの水流で、場所による温度のバラツキが少ない。
図4 チューブの違いによる冷却時のクラウン温度2連:2連チューブPE:ポリエチレンチューブ対照:クラウン冷却なし
図5 チューブの設置
図6 10a当たり商品果収量
‘雷峰’(一季成り性品種)や、‘サマードロップ’、‘デコルージュ’など(四季成り性品種)、どの品種でも効果が高く、収量が増します。
夏季の冷却処理では、クラウン部(=チューブの表面)で18~20℃を目標にします。処理を開始する時期は、5月中下旬頃で、終了する時期は9月中下旬頃です。(宮城県名取市)
クラウン部の温度が15℃以下では展葉速度の低下、出蕾の遅延、草勢の低下になり、23℃以上では、品種によって花芽分化が遅れることがあります。
図7 出蕾数の推移
図8 処理区別商品果収量
出蕾数を見ると短日処理とクラウン冷却を組み合わせた区で連続的に出蕾しており、収量では10~12月の収量が多くなっています。短日処理だけでは、高温期に花芽分化が止まってしまいましたが、短日処理+クラウン冷却区では連続的に花芽分化が行われていたと思われます。
図9 月別株当たり商品果収量(サマードロップ)
図10 月別株当たり商品果収量(デコルージュ)
四季成り性イチゴでは、8,9月の収量が無処理区に比べ多くなりました。クラウン冷却区で1果重が増加し、商品果収量が増加しました。
※クラウン・・イチゴの茎にあたる部位をクラウンと呼んでいます。
先端には成長点があり、茎から葉や花などが出てきます。
‘もういっこ’や‘とちおとめ’などの品種では、定植直後からクラウン部を冷却して、えき芽の花芽を確実に分化させます。近年の気候では9月になっても高温が続き、えき芽の分化が遅れ、頂果房収穫後に中休みが生じることが多いので、クラウンを冷却して確実に分化させることが収量の安定化になります。
冷却処理では、クラウン部(=チューブの表面)で18~20℃を目標にします。処理を開始する時期は、定植直後で、終了する時期は9月下旬頃(えき芽分化後)です。(宮城県名取市)
加温処理では、クラウン部(=チューブの表面)で20~22℃を目標にします。(2010年度は10月下旬から処理を始めていますが、処理開始時期は、さらに検討が必要です。)
クラウン加温後、草丈が伸び、葉が大きくなってきますので、草丈を見ながら、暖房機の設定温度を下げることや電照時間を短くして伸びすぎないように注意してください。
図11 クラウン加温の有無による葉柄・葉長の変化
(宮城県農業・園芸総合研究所 園芸栽培部 作成)
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