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私たちの身の回りに潜む大気汚染や食中毒、悪臭、水質汚染。それらを回避し、安心して暮らせる生活環境を確保するためには、さまざまな分野での調査や研究を行う必要があります。
仙台市宮城野区幸町にある「保健環境センター」では、食品や医薬品、公衆浴場水、大気、工場排水の検査や調査、幅広い分野の研究が行われています。今回は微生物部の畠山敬さんに、細菌やウイルスなど、病原体に立ち向かう現場について伺いました。
Q
微生物部の仕事内容を教えてください。
A
微生物部は、16人の職員が勤務しており、主に「食品衛生法」と「感染症法」に基づいた検査と調査研究を行っています。例えば、保健所の担当者が販売店等から入手した食品を対象に「細菌の数が基準値を超えていないか」「大腸菌等の汚染がないか」など、食品による健康被害の廃絶を目指し、日頃から検査を行っています。
食中毒等が発生した場合は、原因となった病原体の究明と被害拡大防止のために、症状がある人には検便を依頼し、飲食店からは食品・食材を回収して原因を特定します。病院などから保健所にO-157などの感染症患者発生の届け出があった場合には、患者の家族や関係者にさらなる感染者がいないかを検査します。
Q
危険な病原体を取り扱うこともあるのでしょうか。
A
「インフルエンザ」や「はしか」など、たいへん感染しやすい病原体を取り扱うこともあります。施設内には、日本に存在しない危険な病原体や、新型インフルエンザ等の発生時にも対応できる実験室や専用機器が備えられており、病原体が外に漏れ出すことのない安全な施設の中で検査が行われています。
職員はどんな病原体検査にも対応できるよう日頃から検査技術の維持訓練を積み重ねるとともに、新しい検査方法の開発や病原体の調査など、病原体とその発生原因に関係する研究を行っています。
Q
検査技術の維持訓練とは、具体的にどのようなことをしますか。
A
例えば、すでに分かっている病原体を食品材料等に混ぜて、そこから探し当てる訓練を行います。練習とはいえ感染する恐れのある危険な仕事ですので、もちろん病原体の知識と取り扱いの技術が無ければ作業はできません。また、経験者であっても過信は禁物です。
そのために、病原体の知識や検査を学んだことのある職員も初めての職員も、毎年度初めには必ず基礎からの勉強と訓練を行います。
Q
これらの業務は、県民にどのような関わりがありますか。
A
食品の規格や基準の違反は、販売や製造等を行う方々に対する製品の回収や製造中止命令、食中毒の原因施設と特定された場合は営業の停止命令など、行政処分を行う際の科学的根拠になります。また、感染症にかかっていることが明らかになった人には、感染拡大防止のために病原体の危険度に応じて就業や登校の制限、入院治療などの措置が取られます。
微生物部が行う検査は、県民の方々のさまざまな権利に直結していますので、決して間違いが許されない業務です。
Q
皆さんは、使命感を持って業務に取り組んでいると感じます。
感染症の検査など、突発的な業務が発生した場合は、どのように対応していますか。
A
微生物部には、突発的な事件対応が付きものです。インフルエンザやノロウイルスなど、感染に流行期があるものもあれば、食中毒や海外から侵入するまれな感染症(デング熱やジカ熱など)のようにいつ発生するか分からないものもあります。また、家族や関係者の中でもし感染している人が見つかった場合には、患者さんと同様に一刻も早く病院で治療を受けてもらわなければなりません。そのために、職員は休日も当番制で業務を引き継ぎ検査に当たります。
「早く原因を見つけなければ!」「感染が広がらなければ良いな…」など、職員は皆、少しでも早く発生原因や規模を特定し、大勢の県民の健康を守らなくてはという強い思いを持って日々務めています。
Q
メルマガ読者に伝えたいことはありますか。
A
微生物部の関わる事件は、少なければ少ないほど県民が安全であると言えます。しかし、感染症の流行期には、どうしても偶発的な感染被害は避けられません。
微生物部は、県内医療機関からの感染症患者発生情報を集計・解析する「宮城県結核・感染症情報センター」の役割も担っており、解説を付けた週報をホームページ等で情報発信しています。感染症の流行情報等を定期的にご確認いただくことで、県民の方々の感染予防に少しでも役立てていただければ幸いです。
『保健環境センター』HP
インタビュー後、研究施設内を見学させていただきました。検査機材を見てとても驚きました!病原体の採取には、培地から針金のような道具(「エーゼ」というそうです)一本で菌をすくい取らなければなりません。顕微鏡を使い、その病原体を見分ける能力が必要ですし、最新の遺伝子検査の知識や技術も必要です。訓練を積み重ねているからこそ成せる匠の技だと分かりました。
微生物部は、機械化できない繊細な作業を職員一人一人が手作業で行いながら、県民の方々のために日々病原体と戦い続けています。使命感を持った職員によって成り立っている職場だと感じました。
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