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アフロディテの解剖学
パウル・クレー(1879-1940)
1915年
20×13.6cm(台紙 30.3×22.3cm)
紙、白亜の下地に水彩、台紙に貼付
1913年から15年にかけてクレーは集中的に抽象画の問題と関わり、制作をします。第一次大戦のさなか「この世界が恐怖にみちていればいるほど、芸術は抽象的になるが、一方、幸福な世界には此岸の芸術が栄える」と彼は日記に書き、自身はパトスのあるロマン主義的な抽象を彼岸に構築することをめざしました。
本作品はその系列に連なります。緑の両目や性器など具象的なイメージも残存し、血を思わせるような赤が多用され、不定形が散乱することから「解剖学」の言葉が選ばれたのでしょう。アフロディテに代表される古典古代美術以来の「此岸の芸術」の解体そのものをここに指摘できます。そして、これには実際にハサミも入れられました。描きあげた作品の両端を切り取った中央部が本作で、残りはそれぞれ上下逆さにし、台紙に貼りあわせて別の作品としたのです。愛と美の女神の主題を絵の中でも物理的にも解体したことにイロニーがあります。
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