研究トピックス（R3）/令和3年度新規基幹種雄牛「安百合幸(やすゆりさち)」「勝秀好(かつひでよし)」「勝美桜(かつみざくら)1」について

畜産試験場　酪農肉牛部

畜産試験場で繋養している種雄牛,「安百合幸」（写真1）,「勝秀好」（写真2）及び「勝美桜1」（写真3）が,新たに本県の基幹種雄牛に選抜されました。現場後代検定成績（表1）では,いずれも枝肉格付の肉質等級4・5率が100％で優秀な成績でした。今回紹介する3頭は,秀でた産肉能力や体型的特長を持ち合わせており,肉用牛の育種改良の推進や優良牛の増産,さらには「仙台牛」のブランド力や名声の向上等に貢献できるものと期待します。

【安百合幸プロフィール】

「安百合幸」は,父に「百合茂」,母の父に「安福久」,母の母の父に「金幸」の血統構成で,県有種雄牛においては,初の「百合茂」産子です。現場後代検定（去勢9頭,雌11頭）成績では,雌産子の平均枝肉重量が歴代第1位で,ロース芯面積,歩留基準値及び脂肪交雑が去勢産子を上回りました。産子の枝肉は,ロース芯の交雑脂肪の形状が小ザシ,内腿のヌケの良いものが散見されました。また,「安百合幸」は,茂金系種雄牛を父に持つ繁殖雌牛へ交配がしやすいのも魅力です。ただし,一番頭数が多い「百合茂」を父の持つ繁殖雌牛への交配は,近交係数が高くなるので注意してください。

【勝秀好プロフィール】

「勝秀好」は,父に「好平茂」,母の父に「百合茂」,母の母の父に「勝忠平」の血統構成で,昨年度の「好久勝」に次ぐ「好平茂」の後継種雄牛です。現場後代検定（去勢8頭,雌7頭）成績では,本県の後代検定史上最高の枝肉重量679kgを記録し,ばらの厚さの平均値9.9cmは歴代第1位を獲得しました。父「好平茂」の成績を上回り,さらに,兄「好久勝」と比較し,枝肉重量以外の形質で上回りました。「勝秀好」の体格は小さめですが,産子の枝肉は,筋肉の厚みがあり見栄えするものが多く特筆すべきことです。「好平茂」を父に持つ繁殖雌牛だけではなく,「勝忠平」を父に持つ繁殖雌牛との交配でも近交係数が10%を超過しますので注意してください。

【勝美桜1プロフィール】

「勝美桜1」は,父に「勝洋」,母の父に「勝忠平」,母の母の父に「安平」の血統構成で,初めての「勝洋」の後継種雄牛です。現場後代検定（去勢16頭,雌8頭）成績は,父牛「勝洋」を上回りました。「勝美桜1」は,第11回全国和牛能力共進会第1区若雄の部に出品し,優等賞7席に輝き,登録得点は,種牛性42.88が肉用種の特徴42.64を上回りました。このことから,産子は,体上線や均称など体型の改良が期待されます。また,今後のデータ蓄積が待たれるところですが,現場後代検定材料牛では,全国的に関心が高い牛肉のおいしさに関わる「脂肪の質」が優れており,脂肪交雑＋α形質を合わせ持つことが期待されます。「勝洋」を父に持つ繁殖雌牛への交配は,近交係数が高くなるので注意してください。

表1　現場後代検定成績

現場後代検定成績