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創作は発想することから始まります。では、発想はどのようにして生まれて来るのでしょうか。このワークショップでは、意図して発想を生み出すことをねらい、事物からの発想について、さまざまな実験を通してその検証を行いました。
まずは、太古の昔、人類がどのように発想し、表現を行ってきたのかについて、洞窟壁画、文献「博物誌」、縄文式土器を資料として想像し、なぞったり、見立てたり、他と比較したりすることが発想のきっかけであったのではないかと推論しました。次に、「きっかけ」を見つけるためには「造形的な視点」が必要であることから、この視点について確認した上で、以下の実験を始めました。
「外に出て造形的な視点を生かして写真を撮る実験」、「室内でものの並べ方を工夫して造形的な空間をつくって写真を撮る実験」を行い、参加者がそれぞれ自分の携帯電話の写真機能を使って撮影した写真を参加者で鑑賞し、それぞれの視点のよさや表現のよさについて意見を出し合いました。この話し合いを通して互いの視点の差異に気づくことで、さらに造形的な視点についての理解が深まりました。
次に行った実験は、「ルーローの三角形」や「フラクタル幾何学」などからの「形からの発想」です。レオナルド・ダ・ビンチの「大洪水」や草間彌生の作品を参考にしました。
その次は、「音楽からの発想」で、作曲家ドビュッシーの「海」を聴きながら、思い思いの形を生み出すことに挑戦しました。その後、「海」の基となった北斎の「神奈川沖浪裏」を鑑賞しました。次に、藪野健の4枚の油彩画を鑑賞し、自分がそれらの絵の中に入ったと仮定して、絵の中の世界で出会う新しい風景を想像して描く実験を行いました。
最後の実験として行ったのは、鑑賞からの表現です。コレクション展示室で白髪一雄の作品を前にして、どのような手順で、どのように描いたのかを考えたあと、そのイメージが鮮明なうちに創作室に戻り、大量のポスターカラーを画面に出し、フィンガーペインティングで表現しました。参加者は、白髪一雄になったつもりでそれぞれの表現を楽しみました。
参加者からは、「白髪一雄の作品から受けた印象をそのまま大量の絵の具で表現できたことが一番楽しかった。発想がどんどん沸いてきた。」「できた自分の作品を写真に撮って更に加工してみてもおもしろいのではないかと感じた。」などという感想が多く寄せられました。
このことから、本ワークショップで行った数々の実験は、それぞれの参加者にとって、発想の「きっかけ」を意図的に手繰り寄せるために効果的であったことがうかがえました。
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