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93色の調色された色紙セットを主な材料に使い、色と色の間で起こることを確かめ、最後は絵の色について考えるワークショップを行いました。
1日目の午前は、まず、ウォーミングアップとして、自分の感覚に従い、「形から色」、「色から形」を考えることを試みました。「形から色」は、三角形、正方形、円を黄、赤、青のいずれかの色画用紙に分けて切り、台紙に貼りました。「色から形」は、自分で選んだ色の塩ビフィルムシートを、その色の形を考えて切り抜き、窓に貼りました。
次に、色紙セットを各自1組ずつ使い、93色にどんな色があるか、一通り見てから、好きな配色になるように5色から7色選び、横一列に並べました。各色の見える面積を変えて重ねても良いとしました。同様に、心理的に抵抗感のある配色をつくり、横一列に並べました。
続けて、93色を自分なりの分類をして、時間をかけて、任意の配列で机上に並べました。並び終えたらそれぞれの配置を見て回り、他の人の分類がどのような規則・秩序か想像したあと、1人ずつ各自の分類について話しました。
午前中に行ったのは、主観的な色彩を確かめるいくつかの試みでした。その都度、自分だけでなく他の人の試みもよく見ながら進めていきました。
1日目の午後は、はじめに、午前に試みた主観的な色の分類に対して、客観的な3次元に色を配置する分類について取り上げました。いくつかの表色系などに触れ、3次元の広がりを持つ色空間を頭の中にイメージしました。その上で、色紙を使い、PCCS(日本色研配色体系)の色相環をつくってみました。
次に、色紙を並べ替え、小さな色紙のチップも使い、同化やコントラストといった、隣り合う色の相互作用で色の見え方が変わることを体感しました。バウハウスで教鞭をとったジョセフ・アルバースの演習を参考に、いくつかの事例を皆でやってみました。
さらに、色紙を使って、透明性を感じさせる配色を試みました。具体的には任意の2色配色をつくったあと、3色目を間に入れ、透明性を錯覚させる3色配色をつくりました。物理的に透明な材料を用いなくても、不透明な色紙を用いて、現象としての透明性をつくることができ、これは絵の色でも複雑に起こっていることを確認し、1日目を終了しました。
2日目は、色紙の色から絵具の色、絵の色に話を広げていきました。まず、1日目の透明配色の試みに関連して、色の現われ方の様相の事例として、表面色、面色、空間色について話しました。このような異なる色の現われ方を、絵の中では絵具を使って描き分けていることを確認しました。
次に、19世紀と20世紀の色をめぐる世界観の変化について話し、モネ、スーラ、ゴッホらの作品に触れたあと、クレーとカンディンスキーの作品を紹介しました。
そして、展示室に行き、コレクションの、ヴァシリー・カンディンスキー《「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)》(1914年)とパウル・クレー《パレッシオ・ヌア》(1933年)を中心に、絵具の重なりと色をじっくり見ました。
2日目の午後は、まず、この2作品から、各自どちらかを選び、印刷物から色を採取して、色紙に置き換えるとどんな色が使われているか確かめました。
そのあと、採取した色紙を等分割して色のチップをつくり、画用紙の中に並べた。2人の作家の色彩の使い方を分析し、そのエッセンスを配色表として表現することを試みました。使われている色にどんな段差があり、色の移行や、対比的な色の響き合いがあるか、観察しながら試行錯誤しました。絵全体ではなくて、部分に注目しても良く、また、ガッシュなど色材を使い自作のチップを使っても良いとしました。
最後は、制作中に気づいたことなどを1人ずつ話し、終了しました。作品から色を探し出す中で、第一印象よりも多くの色が使われていることに驚いたなどの声が上がり、見るだけでは分からない発見がありました。
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