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角山遺跡は、桃生町役場から約1.6km東の桃生町太田字角山にあります。遺跡は北上川によって分断された北上山地の南にあたる独立丘陵に位置しています。丘陵は南西から北西方向に細長く延びており、標高は最も高いところで25mほどあります。丘陵の南と北には沖積地が広がっています。
周辺には、延喜式内社で桃生郡内六座中筆頭であった日高見神社などがあります。また、南方約3kmには、古代の城柵官衙遺跡として有名な桃生城跡もあり、郡内でも古代史の舞台となった地域です。
角山遺跡は、三陸自動車道の矢本石巻道路建設に伴い、平成13年度に確認調査、平成14・15年度に発掘調査を行っています。
今回の調査では、丘陵南斜面と北斜面から竪穴住居跡、鍛冶(かじ)関連遺構、竪穴状遺構、掘立柱建物跡、溝跡、土壙などが発見されました。特に、南斜面からは多数の住居跡などが高い密度で発見され、ほぼ同じ場所で複数回建てられているところが多く見られました。また、遺跡の南に面する沖積地からも水田跡が見つかりました。
遺物は、竪穴住居跡を中心に多数の土器が出土しており、鍛冶関連遺構の周辺からはふいごの羽(は)口(ぐち)や鉄(てっ)滓(し)が出土しています。また、縄文時代の土器や石器、弥生時代や古墳時代の土器、中・近世の陶磁器が少数出土しています。
以下に、主要な遺構について概要を説明します。
竪穴住居跡1 炭化材や焼土が床面に散らばっており、焼失住居と考えられます。上方中央の大きなカマドには角礫の支脚が据えてありました。この住居の下にはさらに少なくとも1軒の古い住居跡が隠れています。
竪穴住居跡2・3 手前の小さい住居跡が平安時代、奥の大きな住居跡が奈良時代の住居跡です。奥の住居跡はカマドの周りで多くの土器が見つかりました。カマドの左側ソデ部周辺には、古いカマドの痕跡が残されており、この住居も建て替えられていることがわかりました。
竪穴住居跡は56軒見つかっています。時代は、出土した土器から奈良時代から平安時代のものと考えられます。丘陵斜面に造られていたものが多く、土砂が流出したり、後世に削られたりしているため、当時の形を留めているものはありません。
住居跡の確認された状況から推定すると、平面形は方形で、大きさは一辺が3~7mで、深さは深いもので80cmほどあります。炊事の施設であるカマドがみつかったものがあり、奈良時代の住居は北側に設けられたものが多いようです。平安時代の住居のカマドの向きは一定していません。
出土遺物は、土師器(はじき)という素焼きの土器が多く、須恵器(すえき)と呼ばれる窯で焼かれた灰色の土器は少ない傾向が見られます。土師器には煮炊きに使われた甕(かめ)や甑(こしき)、食物を盛るのに使われた鉢(はち)や坏(つき)や高坏(だかつき)などが使われたと考えられます。また、カマドで使われた支脚(しきゃく)という柱状の土製品なども出土しています。
鍛冶関連遺構 削りだされた平坦面から、円形の炉跡が3基確認されました。ただし炉跡からは鉄滓などは発見されず、地山の土で埋め戻されており、鍛冶炉本体ではなく、炉の掘り方部分にあたる可能性もあります。上屋を伴います。
灰白色火山灰に覆われた水田跡 降灰後、復旧されませんでした。
鍛冶関連遺構は6基見つかっています。出土した土器から平安時代のものと考えられます。竪穴住居跡と同様に造られた当時の形を留めているものはありませんが、斜面側にコ字状の溝を巡らし、平坦面を削りだして、1~3基の炉跡と考えられる穴を設け、これらを覆う上屋を造った施設と、炉跡のみが確認されたものとの、2つがあります。
出土遺物には、火力を上げるため送風する際に使われたふいごの羽口や鉄滓があり、炉跡の中や周辺から出土しています。
水田跡は、標高約3.5mの現在の水田下から、10世紀前葉に降ったと考えられている灰白色火山灰層に覆われた状態で発見しました。水田は4枚検出しており、平面形は方形で、一枚の大きさは一辺が約10mほどです。これらはいずれも水口でつながれていました。
遺物は、水田跡の周辺から土師器の坏が少数出土しており、この中には墨で字が書かれた墨書(ぼくしょ)土器があります。
竪穴住居跡や鍛冶関連遺構のほかには、掘(ほっ)立(たて)柱(ばしら)建物(たてもの)跡(あと)や土器などを捨てた土壙(どこう)などが見つかっています。
奈良時代の竪穴住居跡から出土 すべて素焼きの土師器で、いろいろな器があります。
土師器・坏 食物を盛る椀形の土器
土師器・高坏 食物を盛る脚付の土器
土師器・甑 米などを蒸す土器
墨書土器 平安時代の水田跡の周辺から出土した
鉄滓 精錬過程で排出された純度の低い鉄
ふいごの羽口 鍛冶炉に空気を送るための土製の管
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