宮城県権限移譲推進要綱
平成20年3月24日 制定
第1 要綱の趣旨
県から市町村への権限移譲については,昭和55年以降,市町村と協議の上,計画的に移譲事務の拡充を図ってきた。また,平成15年に制定した「県から市町村への権限移譲推進要綱」では,権限移譲に関する県の基本的な考え方や対象事務,支援措置を明確化するとともに,県として市町村に権限移譲が可能と考える事務を一括して明示(メニュー化)し,市町村の申し出による移譲方式(個別移譲方式)を取り入れるとともに,平成17年には,関連する事務をパッケージ化して移譲する包括移譲方式を取り入れ,住民に身近な行政はできる限り身近な地方公共団体において処理することを基本として推進してきたところである。
本要綱は,これまでの取り組みを踏まえ,市町村が住民のニーズや地域の課題に応じて自主的・自立的に地域の在り方を決める「地方主権型社会」の実現を推進していくため,そして今後一層,基礎自治体としての市町村が,自らの責任と判断で地域づくりができるよう支援するために策定するものである。
第2 権限移譲を実施するに当たっての基本的な考え方
- 住民に身近な事務は,極力基礎自治体である市町村において処理すべきであるとの考えに基づき,市町村と県との適切な役割分担の下,広域的な調整を必要とする事務として県が担う必要がある事務や,県民の安全・安心の観点から専門的な知識や技術が強く求められる事務など,引き続き県が担うことが期待される事務以外の事務については,市町村に移譲することを原則とする。
- 権限移譲の効果を十分発揮するため,権限の移譲に当たっては,財源措置のみならず,必要な人的支援措置もあわせて実施する。
- いわゆる平成の大合併により誕生した広域圏又は広域圏に準じた広がりを持つこととなった新市については,合併により集約されたマンパワーを活用した,より高度な行政サービスの実現や,より自主的な町づくりを進めるための権限が拡充されるよう,積極的に移譲を進める。
第3 権限移譲の方式
1権限移譲の対象となる事務のメニュー化
- 移譲対象事務の選定:上記の考え方に基づき,県として移譲が適当と判断する権限(以下「移譲対象事務」という。)の選定を行うに当たっては,市町村に対して移譲を希望する事務の照会を行うほか,市町村と県の間で権限移譲に関する意見交換を行う場を設定し,移譲対象事務について必要に応じて見直すものとする。
- 移譲対象事務の提示:上記により選定された移譲対象事務及び移譲に当たって必要となる諸条件を,別途「移譲対象事務一覧」として取りまとめて示することとする。なお,政令市,市,町村など自治体の規模・体制に応じた移譲対象事務の提示を行うこととする。
2市町村の申出による権限移譲方式
県は,以下の権限移譲の方式及び移譲対象事務の内容について,市町村に十分説明するとともに,市町村の求めに応じて,移譲対象事務についての具体的な内容を説明する場を設ける。
- (1)個別移譲方式
市町村は,県に対し,「移譲対象事務一覧」中「1.個別移譲事務」に示された事務のうちから,移譲を希望する事務について申出を行い,協議の上,具体的な移譲事務の内容を決定する。
- (2)包括移譲方式
市町村は県に対し,「移譲対象事務一覧」中「2.包括移譲事務」に示された事務パッケージのうちから,その規模や能力,まちづくりの方向性を踏まえ,移譲を希望するものについて申出を行い,協議の上,一括した移譲事務を決定する。
3重点移譲事務
県は,既に一部の市町村に移譲実績のある事務や,特に住民に身近な事務として市町村が担うべきと判断する事務を重点移譲事務と位置付け,当該事務が移譲されていない市町村に対して,事務の具体内容を説明するなど,県として積極的に権限移譲を推進していくこととする。
第4 実施基準
県の権限に属する事務について,主として,
- 住民の生活に密接に関連する権限で,市町村に移譲することにより住民の利便性が向上するものであるか
- 県において当該事務を行うより,市町村において行うほうが行政の効率性,迅速性が増すものであるか
- 市町村に移譲することにより,市町村自らの個性的な地域づくり・暮らしづくりを可能にするものであるか
- 市町村等から特に移譲の要望があるものであるか
という観点から検討を行い,市町村に権限移譲することが適当と判断されるものを「移譲対象事務一覧」に一括して示す。
第5 実施方法
- 市町村と県の協議及び条例の改正:県は,地方自治法第252条の17の2の規定に基づき,市町村の申し出を受けて権限を移譲するに当たっては,当該市町村の移譲事務処理実施体制等に関して,あらかじめ十分に協議を行い,最終的に市町村の意向を確認後,県において「事務処理の特例に関する条例」を改正し,権限の移譲を行う。
- 移譲を受けた市町村の責務と県の支援:県から権限の移譲を受けた市町村は,自らの責任において移譲を受けた事務を適正に処理し,責任の所在が不明確となるなどの弊害が生じることのないよう,必要な事務処理体制を整備する責務を負うものである。
また,県としても移譲が円滑に行われるように,積極的に市町村を支援する。
第6 県の支援措置
1財源措置
事務処理に必要な人件費,賃金,旅費,需用費,役務費等の経費単価を設定し処理件数によって交付金額を積算の上,「宮城県移譲事務交付金交付要綱」に基づき,事務処理交付金として交付する。さらに,新規移譲事務については,初年度調整交付金を交付する。
2人的支援措置
本要綱に基づき権限の移譲を受けた市町村から県に対し職員の派遣等,人的支援の求めがあった場合には,移譲事務の内容に応じて職員を派遣するなど,必要な支援を行う。
(1)人的支援の方法
- (a)移譲事務量が1人役を超える場合(自治法派遣方式)当該市町村との協議に基づき所要の人員を地方自治法第252条の17の規定により派遣(自治法派遣)することができるものとする。
派遣期間は,市町村における当該事務処理の能率化,合理化等が図られるための必要期間とし,原則として1年間とする。ただし,市町村の求めにより,派遣期間を延長する必要がある場合には,原則として1年間,特別の事情があると県が認める場合においては,最大限2年間延長することができるものとする。
- (b)移譲事務量が1人役に満たない場合(業務支援方式)移譲事務の円滑な実施を支援するため,当該市町村との協議に基づき,移譲する事務の内容に応じて一定期間出張等による業務支援を行うほか,相互人事交流制度等を活用し,人的支援を行うことができるものとする。
(2)人件費等の負担
(1)(a)により派遣される職員の人件費については,地方自治法第252条の17の規定により派遣を受けた市町村の負担とし,(1)(b)により派遣される職員は,人件費については原則として県の負担とし,その他の経費の負担については,当該市町村と別途協議の上定める。
なお,事務処理交付金においては,別途人件費も含め,適切に県から市町村に交付する。
3移譲前研修
移譲される事務に関し,移譲前に市町村職員に対する研修の必要がある場合には,当該事務を所管する主務課等が作成する研修計画により,県が実施する。
4適切な事務引継
県は,移譲される事務について,必要に応じて説明会を開催するとともに,文書の整理・引継はもとより,事務処理マニュアルの作成・提供を行う等,適切な事務引継に努める。
5移譲後の助言
法令の改正や処理基準の変更などにより,移譲された事務を市町村が行うに当たり影響が生じる場合は,県は,市町村の求めに応じて研修会の開催を行うなど,当分の間,必要な支援に努めるものとする。
第7 県民への情報提供
移譲される事務及び移譲市町村(所管課)については,各種広報や通知などにより十分な期間をもって県民及び関係機関に周知を図るとともに,権限移譲の進捗状況については,市町村ごとの状況も含めて,県ホームページや広報を通じて広く定期的に公表する。