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第4号 平成16年3月
宮城県中南部下水道事務所
(仙塩第4系列の反応槽覆蓋設置状況)
平成12年度から整備を進めていた仙塩第4系列処理施設の完成が間近となりました。総事業費43億円強を要し、本県初の高度処理対応施設となります。反応槽は嫌気・無酸素・好気槽に仕切られ、環境に配慮して覆蓋が設けられています。従来の標準活性汚泥法に比べて窒素・リンを大幅に削減できるため、松島湾の浄化に寄与するものと期待されます。
第4系列の完成に伴い、全処理能力は22万m3/日となり、下水道普及率も98%に近い現在、仙塩は建設の時代から本格的に管理の時代へ移ろうとしています。
主な事業は、仙塩流域では汚水ポンプ改築工事、平成15年度より継続で行われている処理場の管廊耐震化工事、放流渠工事及び塩釜ポンプ場改築工事他です。
阿武隈川下流流域では中央監視制御設備改築(電気)工事、5-1/2系列水処理設備(機械・電気)工事、亘理ポンプ場ポンプ(機械・電気)設備工事他です。
鳴瀬川流域と吉田川流域は当面県単独維持管理費のみで、管理に重点を置きます。
4流域全体の事業費は、建設補助事業20.4億円、県単独事業2.7億円でこれらの事業のあらましは次のとおりです。
流域名 |
建設(補助)事業 |
維持管理費(県単独) |
---|---|---|
仙塩流域 |
処理場汚水ポンプ改築工事 |
管渠補修・蓋改修工事 |
阿武隈川 |
中央監視制御設備改築(電気)工事 |
幹線管渠清掃業務委託 |
鳴瀬川流域 |
管渠調査・渠補修・蓋改修工事 |
|
吉田川流域 |
下水道台帳修正・線管渠調査 |
昨年7月26日に発生した、県北部連続地震に係る都市災害査定が平成15年11月26日に行われました。当事務所管理の鳴瀬川流域下水道志田幹線人孔直壁部の被災23箇所他、処理場1系最終沈殿地のスカム掻寄機破損等2件の被災箇所を申請していましたが、現地査定の結果、申請額に対し満額査定が認められました。
工事は12月初旬に発注され、3月末頃に復旧する予定となっています。
(災害査定状況)
仙塩処理場の処理能力(166,500立方メートル/日)は現在の年間流入量から予測すると平成18年度には達するもの予想されており、それに対応するための第4系列の増設工事が平成16年3月に完成することになりました。
工事は、平成12年12月に水処理土木工事に着手して以来、平成14年度発注の電気・機械設備の据付工事等が概ね完成したことから、現在、湛水して設備の性能を試験中で、汚水を流しての確認試験を行った後、今年4月から本格的に稼働することになりました。
既設の1系列から3系列は、BOD.SS等の除去を目的とした標準活性汚泥方式で、第4系列は、「松島湾特定水域高度処理計画」に基づき松島湾水質の規制項目であるT-N、T-Pを段階的に除去することを主眼として設計されています。処理場に入って来た汚水は最初沈殿池で固形物を沈殿分離された後、反応タンク(担体活用型)三槽の装置(下図)によって燐、窒素が除去(「嫌気槽」では水中撹拌機によって燐が放出され、「無酸素槽」で脱窒され、「好気槽」の散気装置により硝化とリン摂取をします。)された後に最終沈殿池に送られて汚れを沈殿させ、最後に滅菌消毒されてきれいな水となり、貞山運河に放流されます。
第4系列の完成により、処理量55,500立方メートル/日が増量されて、全体では222,000立方メートル/日の処理能力となります。今後、既設の1~3系列は、年次計画で高度処理化への改築を図っていく事になっています。
(高度処理説明看板と第4系列完成状況)
仙塩処理場供用開始以来、使用されてきた暫定放流口(コルゲートパイプφ1.500mm)に替わる放流口(出口部2連構造函渠3.2m×1.7m)の新設工事が昨年10月中旬に発注され、運河を利用するノリ漁の始まる今年9月末を完成目途に函体部分を施工中です。
処理場の処理水は、現在貞山運河に流速毎秒0.8メートル~1.7メートルで放流されていますが、新設の放流口設計は毎秒0.12メートル~0.25メートルとかなり流速を考慮した構造となっております。新年度に入り護岸工、護床工事が施工されることにより、運河利用の漁協組合員方々の要望に応えられると期待されます。
(出口部断面図と函体施工状況)
毎日の下水処理については多数の従業員がその作業に当たっています。当事務所では作業中において事故が発生しないようにメンテナンス業者の業務体制及び現場の状況等について毎年安全パトロールを行っています。今年度からはパトロール回数を年2回に増加し安全性を高めることにしました。パトロールは11月から12月にかけて4処理場で各々実施され、その結果、総じては安全性が確保されていると認められましたが、メンテナンス業者の安全管理規程を処理場ごとにきめ細かく制定するよう指導しました。また、現場巡回では処理場内の各種建物や設備等において、安全表示・作業表示等を適切に掲示することや、側溝については蓋等を増やすように指導しました。
(パトロール状況)
(会場:県南浄化センター)
去る10月下旬に中南部下水道事務所管内の市町村下水道事業課長会議が開催されました。会議は4つの流域下水道(仙塩・阿武隈川下流・吉田川・鳴瀬川)について個別に日程を設定して開催されました。会議の内容は次のとおりです。
流域下水道は上流部(公共下水道)を管理する市町村と下流部(幹線管渠と処理場)を管理する県が互に協力して建設や維持管理をしていくものです。今後とも流域下水道の円滑な運営を確保していくよう努力します。
昨年9月から今年3月にかけて中南部下水道事務所長が管内市町村の下水道関係課を訪問し、下水道をとりまく諸情勢について話し合うとともに普及率の向上等について要望しました。また、流域下水道は県と市町村が一体となって発展させるものであるため、個々の市町村が抱えている案件等についても話し合いを実施しました。
訪問は管内11市町村について実施されましたが、その中で比較的下水道普及率が低い市町村でも、農業集落排水事業や合併浄化槽処理区域を加えると汚水処理施設の整備率が平均60%を越えており、市町村内の住民の生活環境が良好であることを実感するとともに、山間部や農村区域では流域下水道よりも安価に整備運用できる各種の設備を使って汚水処理していくことが必要であろうと感じられました。
(単位 %) | ||||
市町村名 |
流域下水道普及率 |
農業集落排水整備率 |
合併浄化槽整備率 |
整備率計 |
---|---|---|---|---|
名取市 |
883.9% |
2.0% |
1.7% |
87.6% |
角田市 |
30.2% |
1.9% |
8.1% |
40.2% |
丸森町 |
31.0% |
13.1% |
18.6% |
62.7% |
亘理町 |
43.7% |
19.0% |
62.7% |
|
大和町 |
73.6% |
5.2% |
78.8% |
|
三本木町 |
49.5% |
6.2% |
3.7% |
59.4% |
大郷町 |
34.8% |
9.8% |
11.1% |
55.7% |
大衡村 |
41.5% |
34.9% |
76.4% |
|
蔵王町 |
46.1% |
32.3% |
78.4% |
|
村田町 |
54.8% |
3.8% |
11.3% |
69.9% |
松山町 |
72.9% |
1.9% |
74.8% |
(大和浄化センターでの研修風景)
平成15年11月、当事務所管内の市町村における下水道の水質管理担当者を対象として研修会が開催されました。出席者は、公共下水道と流域下水道幹線との接続点における水質管理や、特定事業場等(有害物質を排出する恐れのある事業場)からの排水の監視等を担当している職員です。
今回は、届出事業場が特定事業場に該当する場合の具体例や、報告書の提出方法等について研修しました。また、有害物質などが下水処理場へ流入した事例について詳細に説明され、日頃市町村が行っている水質管理の重要性を再認識しました。なお、研修会は下記のとおり会場を3箇所に分けて実施されました。
下水汚泥焼却灰は、下水道の普及と水処理の高度化に伴い下水処理場から発生する産業廃棄物です。仙塩流域下水道から排出する年間焼却灰は全体で約1,500トンの全部が小鶴沢最終処分場に埋立て処分されています。
平成12年6月の循環型社会形成推進基本法の施行を受け、宮城県下水道課では下水汚泥の有効利用と循環型社会の構築として減量化に応えるために、昨年、下水道から排出する下水汚泥及び汚泥焼却灰の有効利用を目指すべく、研究・事業化企画提案の募集を行ったところです。その企画提案の中にありました民間アスファルト合材工場への焼却灰の有効利用について、簡単に説明します。
アスファルト混合物は瀝青材料(石油系アスファルト、改質アスファルト等)と骨材(砕石、砂)とフィラーを材料にプラントで150~180度に加熱混合して製造されます。そこで、下水汚泥焼却灰をフィラーの一部代替としてアスファルト混合物への有効利用を図ろうとするもので、室内試験においては、通常のアスファルト混合物と何ら変わらない物理試験性状結果が得られました。
安全性に関しては,焼却灰及び焼却灰入りアスファルト混合物の溶出試験、含有試験を「財団法人 宮城県公害衛生検査センター」において検査して、27対象項目の溶出試験、9対象項目の含有試験を実施し、計量証明を受け、安全性の確認を行いました。
下水汚泥焼却灰のアスファルト混合物への有効利用は、本県では最初でありますが、他地域(東京都、神戸市)ではもうすでに事業化されております。
今後は、試験施工を行い、施工性、安全性の検証を行い有効利用を図っていく予定です。
(写真提供 アスファルト混合物製造前田道路株式会社亘理工場)
丸森町は、キャッチフレーズである「水とみどりの輝くまち」にふさわしい自然環境に恵まれた快適な定住条件下にあります。しかし、近年の生活様式の変化に伴い家庭からの汚水排水量は年々増加し、特に生活雑排水を直接河川や水路に放流することで、農業用水などへも少しずつ悪影響を与えてきました。かつては水生小動物が多くみられ、子どもたちに川遊びの楽しさを与えていた小川も、その輝きを失いつつありました。
そこで、町では公共用水域の水質汚濁を防止し、快適な居住環境を提供しようと「丸森町流域関連公共下水道事業」を昭和60年度に事業着手しました。平成3年の供用開始以来、これまで多くの関係者のお力添えと住民の理解の中、事業認可区域のほぼ全域の工事を完了し、当該区域の水洗化普及率を8割強まで到達させることができています。
しかしながら、広い行政区域と地形に起因する集落の散在などから、公共下水道だけでは対応しきれない地区の方が多いため、町全域での水洗化はまだ緒についたばかりであり、これからの展開こそ急務であると言えます。
従って、我が町では、それぞれの地域の条件を考慮し、町及び住民の負担能力などに応じて、より効率的で効果の期待できる生活雑排水対策が必要とされています。
それには、公共下水道を機軸としながら、3地区の農業集落排水事業に加え、合併処理浄化槽の設置を含めた広義の「下水道事業」という位置づけの中で新しい段階の整備を進めていかなければならないものと考えています。
キャッチフレーズに恥じない環境を未来へ残し、誰もが安全で安心して笑顔で暮らせる町にするために。
これまでの事業の推進により、全域の水洗化普及率はまだ47%ほどですが、一部の地域では夏になると、子供の頃のように多くの蛍の灯りを目にすることができるようになりました。
(秋の丸森町不動尊公園)
東北自動車道を仙台から北上して行くと大和(たいわ)インターにさしかかる手前で高速道路沿いの西側に濃いグレーの瓦屋根に彩られた古風な土蔵様式の建物が見えてきます。それが吉田川流域下水道大和浄化センターです。その美しい姿は一見下水処理場には見えませんが、きれいな水を作るという意味で斬新な建物群といえましょう。その建物のデザインのイメージモデルは、仙台藩主伊達政宗の三男宗清が江戸時代初期の慶長15年(1610年)から元和2年(1616年・宗清16歳の時)まで過した「下草古城」と呼ばれる居館だったのです。
下草古城の位置は、現在の大和浄化センターの西方の水田地帯にありました。ところが、低地に位置していたことにより毎年のように洪水の襲来に遭ったため、宗清はここを撤退し、元和2年に現在の大和町吉岡に城を築き、吉岡城主としてその生涯を送ったといいます。なお、大和町吉岡の天皇寺境内にある五輪塔は、宗清の墓と政宗の側室で宗清の養母であった飯坂の局の供養塔となっており、今でも町民に親しまれています。
下草古城は、度重なる水害を被り撤退しましたが、その建物の姿は下水処理場として現在によみがえりました。そして、今日も絶え間なく流れてくる下水をこの美しい大和浄化センターに集めて浄化させ、快適な生活環境を確保し自然を守るため、自然界に戻しているのです。
大和浄化センターは、県の委託に基づき(財)宮城県下水道公社吉田処理場が維持管理を行っています。
(吉田処理場)
(汚泥消化槽)
(汚泥焼却施設)
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