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ハクサイでは,根が「こぶ」のようになってしまう「根こぶ病」が問題となっています。根こぶ病対策には,農薬の利用や根こぶ病に耐性をもつ「抵抗性品種」の利用が挙げられ,特に抵抗性品種の利用は減農薬の観点からも近年注目されています。
一方,抵抗性品種であっても,栽培するほ場との組み合わせによっては根こぶ病を抑制できない場合があり,問題となっています。これは,根こぶ病菌の病原型と,抵抗性品種が持つ「抵抗性遺伝子」の型が合わないことが原因です。そのため,より多くの根こぶ病の病原型に対して耐性をもつ,汎用性の高い抵抗性品種の開発が求められています。しかし,そのような品種の開発には,通常多くの根こぶ病菌株を用いた接種試験を行い,その中からより多くの菌株に耐性を示す個体を選抜するという,大変時間と手間がかかる作業が必要となります。しかし,それぞれの病原型の根こぶ病菌株に対応するハクサイの「抵抗性遺伝子」を明らかにし,DNAマーカーによるこれらの抵抗性遺伝子をより多く持つ個体を選抜することができれば,効率的に多くの根こぶ病菌株に対して耐性を有する抵抗性品種を開発できると考えられます。
そこで農業・園芸総合研究所では,神戸大学,株式会社渡辺採種場(以降「渡辺採種場」)と連携し,平成30年から複数の根こぶ病の病原型に対して耐性を示す抵抗性品種の開発に取り組んできました。このプロジェクトでは,渡辺採種場の有する遺伝資源を活用し,交配と外観などの特性による選抜を渡辺採種場が,DNAマーカーによる根こぶ病抵抗性遺伝子を持つ個体の選抜を神戸大学と農業・園芸総合研究所が,栽培試験を農業・園芸総合研究所がそれぞれ実施しました。この成果として,根こぶ病抵抗性ハクサイ品種「祭典ネオ70」(登録出願品種名:「TC9112」)を開発し,令和3年3月26日に株式会社渡辺採種場より品種登録出願を行いました(品種登録出願番号第35320号)。
今後,この品種を用いた栽培試験や現地での適応性を調査しながら普及を図るとともに,得られたノウハウを活用して新たな形質の品種育成にも取り組んでいく予定です。
※本事業はイノベーション創出強化研究推進事業(30029C)の支援を受けて行われました。
写真1:祭典ネオ70の縦断面と外観
写真2:祭典ネオ70の根(左)及び既存品種の根(右)
※根こぶ病を発症すると,根から栄養や水分をうまく吸収できなくなり,萎れたり,生育が停滞したりすることで収穫量の減少につながります。
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