家畜衛生関連法規について
1 家畜伝染病予防法とは
この法律は、家畜の伝染性疾病の発生予防とまん延防止により、畜産の振興を図ることを目的に昭和26年に制定されました。
- 家畜の伝染性疾病の発生を予防するための届出、検査等
- 家畜の伝染性疾病のまん延を防止するための発生時の届出、殺処分、移動制限等
- 家畜の伝染性疾病の国内外への伝播を防止するための輸出入検疫
- 国・都道府県の連携、費用負担等
- 家畜の所有者が遵守すべき衛生管理方法に関する基準(飼養衛生管理基準)の制定
- 生産者の自主的措置
等について定められています。
2 令和2年度の改正内容
令和2年4月、国内における豚熱の発生やアジア地域におけるアフリカ豚熱の断続的な発生を踏まえ、家畜伝染病予防法が改正されました。
3 家畜伝染病予防法改正の背景・趣旨
平成30年9月に我が国で26年ぶりに発生が確認された豚熱(CSF)については、同病に感染した野生いのししによって広域に病原体が拡散し、現在に至ってもなお収束していません。
このため、野生動物の感染に対する対策を強化するとともに、農場における飼養衛生管理を徹底し、家畜の伝染性疾病の発生予防及びまん延防止を図る必要があります。
加えて、平成30年以降、アジア地域においてアフリカ豚熱(ASF)の発生が急速に拡大し、我が国への侵入リスクが一段と高まっているため、畜産物の輸出入を強化し、同病を含む悪性伝染性疾病の侵入防止を徹底する必要があります。
こうした事態に迅速かつ的確に対処するため、国は、家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案を第201回国会に提出し、令和2年3月27日に成立、4月3日に公布されました。
令和2年の家畜伝染病予防法改正のポイント
- 家畜の伝染性疾病の名称変更(豚熱、アフリカ豚熱、その他)
- 家畜の所有者・国・都道府県・市町村・関連事業者の責務の明確化
- 飼養衛生管理基準の遵守に係る是正措置等の拡充
- (1)衛生管理区域に入る者にのみ又は汚染された畜舎・倉庫等から出る者にのみ課せられている消毒義務が、当該施設どちらも出入りする者に課すよう措置。
- (2)家畜の所有者は、衛生管理区域ごとに、飼養衛生管理に係る責任者を選任する制度を創設。
- (3)飼養衛生管理の指導等に係る指針(国が策定)・計画(都道府県が策定)の制度を創設。
- (4)まん延防止措置として、都道府県知事は、家畜の所有者に対し、飼養衛生管理基準の遵守について、指導・助言を経ないで緊急に勧告・命令ができるよう措置。併せて、国の都道府県知事に対する指示の対象事務に追加。
- (5)都道府県知事は、飼養衛生管理基準の遵守に係る命令違反者を公表できるようになるとともに、国は、都道府県における飼養衛生管理の状況等について、積極的に公表できるよう措置。
- (6)飼養衛生管理に関する罰則を強化。
- 野生動物における悪性伝染性疾病のまん延防止措置の位置付け
- (1)野生動物における悪性伝染性疾病の浸潤状況調査、経口ワクチン散布等が法に位置付け。
- (2)感染確認場所での消毒や通行制限、家畜の移動制限等の病原体拡散防止措置が実施できるよう措置。
- 予防的殺処分の対象疾病の拡大
- (1)予防的殺処分の対象疾病にASFを追加。
- (2)野生動物で口蹄疫又はASFの感染が発見された場合にも、予防的殺処分が実施できるよう措置。
- 家畜防疫官の権限等の強化
- (1)出入国者の携帯品中の畜産物の有無を、家畜防疫官が質問・検査できるよう措置。
- (2)海外からの肉製品の持ち込みに対して罰則を強化。