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スモモヒメシンクイ(学名Grapholita dimorpha Komai),別名:ボケヒメシンクイ,スモモヒメシンクイガ
りんご,なし,すもも,プルーン
亘理名取地域では,数年前からスモモヒメシンクイの寄生が疑われていたため,平成20年4月下旬から,岩沼市,亘理町及び山元町のりんご園地4か所,亘理町のすもも園地1か所にスモモヒメシンクイのフェロモントラップを設置した。フェロモントラップに誘引された個体を,宮城県病害虫防除所を通じて横浜植物防疫所塩釜支所に同定を依頼したところ,スモモヒメシンクイであると判明した。
平成28年7月,岩沼市りんご園から採取されたシンクイムシ類と思われる食害痕のある「ふじ」果実から,チョウ目害虫2頭の羽化が確認された。これら2頭を,宮城県病害虫防除所を通じて横浜植物防疫所に同定を依頼したところ,スモモヒメシンクイであると判明した。
今回,宮城県において,スモモヒメシンクイによるりんご果実への加害が初めて確認された。
チョウ目ハマキガ科に属する小型の蛾で,成虫の体長は7mm前後,開張11~14mm内外である。翅は黒褐色で,線状の細かい模様がみられる。卵は扁平で,直径約0.9mmのやや楕円形で,果実表面に産みつけられる。スモモヒメシンクイの形態は,全ステージでナシヒメシンクイに酷似する。ただし,雄成虫では区別が可能で,後翅を十分展開させ外縁の形状を比較すると,スモモヒメシンクイは角張っているのに対し,ナシヒメシンクイは連続した曲線状をしている。
福島県での成虫誘引盛期は,5月下旬,7月下旬及び9月下旬の3回とされ,高温年には4回発生する可能性も考えられている。
りんごへの加害は,主に8月下旬以降に発生する。これは,りんご幼果の毛が産卵の障害になっているためと考えられている。果実内に食入した幼虫は,果皮下を浅く摂食する傾向が強く,果実には直線状,渦巻き状,放射状など様々な食痕ができる。被害果は落下することなく樹上に残る。なお,ナシヒメシンクイと異なり,新梢は害しない。
越冬形態は,老熟幼虫が土中で越冬すると考えられている。卵~羽化までの生育期間は20℃で約38日間,25度で約27日間である。羽化後数日で交尾し,産卵する。
岩沼市りんご園における発生消長は,図1のとおり。
5月初旬頃に越冬世代成虫が飛来し,10上旬頃まで成虫の飛来が確認されている。
同園では,第3世代成虫までの発生が疑われている。
1樹程度のすももが発生源となってりんごに被害を及ぼす可能性があるので,樹数の多少に関わらず,すももの防除を徹底する。
8~9月上旬のシンクイムシ類対象の薬剤防除圧が低下すると,被害を受けやすい。
りんごでの薬剤防除は,主に第2世代及び第3世代の卵及びふ化幼虫を対象に,8月上旬~9月上中旬に実施するのが適当と考えられる。具体的には,8月上旬頃から,5~7日間隔でりんごにシンクイムシ類で登録のある殺虫剤を数回散布する。被害果を発見した場合は,土中深くに埋めたり水没させたりして果実内の幼虫を殺して発生密度を下げる。
フェロモントラップについては,スモモヒメシンクイ用のフェロモンが市販されている。
スモモヒメシンクイの雄成虫は,ナシヒメシンクイのフェロモントラップにも誘引される。また,ナシヒメシンクイのフェロモントラップにスモモヒメシンクイの雄成虫が誘引されるので,後翅の形状で区別する必要がある。
長野県においては,すもも,プルーン及びりんご以外では,なしでも被害が発生している。また,あんず,ネクタリン,うめなどでも,野外で寄生が認められている。
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