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「せん」のイメージが制作行為とどのように結びついているのかを、鑑賞と実践(制作)の場という双方から捉え直すワークショップを行いました。
引かれた線には、描き手である人の存在があります。その人の使った道具や描き方、支持体など様々な要素が線に反映されている上、完全ではありませんが、描き手の意思(心情)もイメージに表れています。導入のワークとして、利き手とそうでない手で「線1本と(自分の)名前」を書き、双方の感覚と「せん」のイメージの違いを確認し、利き手でない手で書いた方がイメージとしては、新しい線質が出ていることを参加者と再確認しました。
その後、創作室前廊下で、どようびキッズ・プログラム「色とあそぶ日」(2023年2月実施)の制作物を鑑賞し、描かれた子どもと大人の「せん」の違いを確認し、透明な支持体を生かしてワーク2「2人で描く『せん』」を実践しました。
次にコレクション展示室に向かい、参加者3、4人のグループに分かれて、ワーク3「気になる線が描かれた作品」をグループで1点選ぶ活動を行いました。作品を選んだ後、グループごとに他のグループと共有し、「せん」のイメージから感じとれる印象、道具や描き方、支持体とイメージの関係と意思について考えました。
普段使用されないような様々な道具と描き方で描かれた作品が多く見られたため、展示室での活動後は、ワーク4「実際に普段とは違う道具で『せん』を描いてみる」ことを試みました。その方法として参加者全員がカーブした長い竹ひごを使用し、墨でA3サイズの紙に単純な図形(丸)を描くことに挑戦しました。支持体から物理的に距離をとったことで、参加者は「せん」のイメージをコントロールできない状況に苦戦しながらも、意思と引き寄せるような軌跡が線に明確に表れることで、道具を介して意思とイメージとの繋がりを実感した様子でした。
午後には、「様々な方法と描き方で『せん』を描く」活動を行いました。午前中のように全員が同じ道具を使って活動をするのではなく、各参加者が創作室にある様々なモノを使用し、道具や色材、支持体、描き方、環境を考え、見たことのない新しい「せん」を生み出す実験を行いました。道具については、素材を組み合わせて道具を作ることも、普段とは異なる道具(素材)を探すことも参加者に任せました。活動は両日ともに様々な「せん」のバリエーションが生まれました。19日には雨天の中、テラスで濡れた状態の支持体をつくり、さまざまな画材で「せん」を描く参加者もいれば、キャンバス地の裏面にボンドやアクリル絵の具を用いて素材の組み合わせを試しながら描く参加者もいました。また、意思のない「せん」を生み出そうとしてテラスに紙、その上に絵の具を置いて蟻に描かせようとした参加者がいたり、ロープを墨に浸して無意識的に紙に置いてみる参加者もいたりと、各参加者が「せん」の表現を実験していくなかで、新しい表現を発見した瞬間があったようです。活動の最後には、全ての制作物を並べ、相互鑑賞を行い、各参加者の制作中の思わぬ発見や発想、意思の状態をお互いに意見交換しました。
今回「せん」を「みる」・「つくる」ことを行き来する活動を行なったことで、参加者の創作活動の広がりや、作品への見方の変化、あるいは「せん」的なモノに対して関心を持つきっかけになったのではないでしょうか。
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