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地方分権をさらに推進するためには、地方政府における自治立法権を担う地方議会が住民に対する説明責任を果たしながら、政策立案機能、監視機能を十分に発揮する必要がある。特に、義務付け・枠付けの緩和などにより地方自治体の条例制定権が広がることに伴い、政策を提言し行政を監視する地方議会の役割と責任はますます大きなものとなる。
地方議会は、これまで議会活動の透明性の向上を図りながら、議会に与えられた機能を充実するため自己改革に努めてきた。今後とも地方議会は、住民の負託と信頼に応えるため、地域の実情に即した自主的な議会運営を目指すとともに、住民に対する説明責任を自覚し、自ら議会機能の向上に努めなければならない。その上で、地方分権をさらに推し進めるためには、議会活動の自由度を高めつつ、地方政府における立法府にふさわしい法的権限を確立する必要がある。
また、議会を構成する地方議会議員が、本会議・委員会において行政に対する監視や政策立案のための充実した審議を行うことは、当該地方自治体の事務に関する調査研究や、住民意思の把握など不断の議員活動に支えられている。今後さらに議会が住民に期待される機能を十分発揮できるようにするためには、公選職としての地方議会議員の責務を法律上明記するとともに、専業化している都道府県議会議員の特性を踏まえて、議員の責務を果たすにふさわしい活動基盤を強化することが喫緊の課題となっている。
さらに、都道府県議会議員の選挙区について、「郡市の区域による」としている公職選挙法の規定を改正し、地域の実情を踏まえ、都道府県が条例で自主的に選挙区を規定できるようにすることにより、住民意思を正しく議会に反映させ、地域の振興を図る制度とすることも重要な課題である。
よって、国においては、速やかに関係法律の改正を行い、地方政府における立法府にふさわしい地方議会の法的権限を確立するとともに、選挙制度の見直しを含め地方議会議員の活動基盤を強化するため、次の事項を実現するよう強く要請する。
1 地方自治法の抜本改正にあたっては、議会の権限を明確にするため、議会の立法権及び行政監視権を明示する基本規定を設けるとともに、会期制度のあり方など議会の活動・運営・組織に関する事項は条例及び会議規則に委ねること。
なお、専決処分や再議など長優位の制度は抜本的に見直すこと。
2 真の二元代表制を実現するため、議長に議会の招集権を付与すること。
3 議会意思を確実に国政等に反映させるため、議会が議決した意見書に対する関係行政庁等の誠実回答を義務付けること。
4 住民から選挙で選ばれる「公選職」としての地方議会議員の特性を踏まえ、その責務を法律上明らかにするとともに、責務遂行の対価について、都道府県議会議員については「地方歳費」又は「議員年俸」とすること。
5 地方議会議員の活動基盤を強化するため、現在法文上調査研究活動に特化されている政務調査費制度について、住民意思の把握や議員活動報告のための諸活動など、幅広い議員活動又は会派活動に充てることができるよう法文上明記すること。
6 住民意思を正しく議会意思に反映させるとともに地域の振興を図るため、都道府県議会議員の選挙区について、「郡市の区域による」としている公職選挙法の規定を改正し、地域の実情を踏まえ、都道府県が条例で自主的に選挙区を規定できるようにすること。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣 あて
政府は、平成22年度から導入した子ども手当について、当初、全額国庫負担で実施するとの方針を繰り返し表明してきたが、平成22年度予算では、暫定的な措置として地方負担約6,100億円が盛り込まれた。
また、厚生労働省は、平成23年度予算の概算要求において、国の財源不足を理由に地方負担を残す現行の負担ルールを当てはめて要求しており、財源構成等については予算編成過程で検討することとしているが、現政権は、来年度以降も地方負担を求めることに前向きの考えを示している。
子育て支援に関しては、地域の実情に応じ、地方自治体が創意工夫を発揮できる分野については地方が担当するべきであるが、子ども手当のような全国一律の現金給付については国が担当し、財源も全額を国が負担するべきであり、来年度予算においても地方負担が継続されることに強く反対する。
よって、国においては、子ども手当について、全額国庫負担で実施することとし、地方に対して一切の負担を求めることのないよう強く要望する。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
厚生労働大臣
国家戦略担当大臣 あて
ロシアのメドべージェフ大統領が11月1日、我が国固有の領土である北方四島の一つ、国後島を訪問した。
北方四島は1855年、「日魯通好条約」によって、日露両国の国境を択捉島とウルップ島の間と定め、以来我が国の領土となっている。その後、1875年の「樺太千島交換条約」により、樺太全島はロシア領となり、ウルップ島からシュムシュ島までの千島列島が日本領となった。1945年、我が国がポツダム宣言を受諾し、降伏の意図を明確にしたにもかかわらず、ソビエト軍が択捉島など北方四島に進撃・占拠したが、1951年に関係国との間で締結された「サンフランシスコ平和条約」を経て、北方四島が我が国固有の領土であることは歴史的な事実である。
また、1993年に細川総理がエリツィン大統領とともに署名した「東京宣言」において、「北方四島の帰属に関する問題については、歴史的、法的事実に立脚し、両国間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する。」との指針を確認している。
旧ソ連時代を含め、ロシアの国家元首が北方領土を訪問したのは初めてであり、大統領の訪問は、日露両国間の合意を無視し、ロシアによる四島の不法占拠を既成事実化しようとするものである。
訪問の背景として、「普天間飛行場移設問題」や「中国人船長釈放問題」など、現政権による外交的対応があることは明白であり、我が国及びアジア太平洋地域の安全保障に与えた影響は重大である。
よって、国においては、今般のメドベージェフ大統領の北方領土訪問に厳重に抗議するとともに、毅然とした外交姿勢でロシアに対して臨むよう強く要望するとともに、北方領土問題を早期解決に導くためにも、早急に外交戦略の立て直しを図るよう要望する。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
外務大臣
内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)
国家戦略担当大臣 あて
脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷等の身体への強い衝撃により、脳脊髄液が漏れて減少することによって引き起こされ、頭痛、目まい、耳鳴り、倦怠感等、多種多様な症状が現れるという特徴を持っており、誰でもなる可能性のある病気である。しかし、この病気についての診断基準や治療法はいまだに確立されていない。
厚生労働省では、脳脊髄液減少症の診断や治療の指針の作成を目指すため、平成19年度から「脳脊髄減少症の診断・治療の確立に関する研究事業」を実施してきた。当初予定していた3年間では、診断基準を作成するために必要な臨床症例が足りないことを理由に、本年度以降の研究の継続を決定しているが、今年8月に中間目標としていた百症例を達成したとの報道がなされた。今後は収集した症例から基礎データをまとめ、診断基準等を示すための作業を早急に行う必要がある。
一方、脳脊髄液減少症を診断するための検査費用については健康保険を適用するとの事務連絡が厚生労働省より出されているが、脳脊髄液減少症の治療に有効とされるブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入)については、いまだ保険適用ではない。患者及び家族は高額な医療費を自己負担せざるを得ず、厳しい状況に置かれており、早期の保険適用が望まれるところである。
よって、国においては、脳脊髄液減少症の診断及び治療の確立を含めた対策を早期に実現するよう次の事項の実施について強く要望する。
1 「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究事業」においては、早期に脳脊髄液減少症の診断基準及び治療指針(ガイドライン)を定めること。
2 ブラッドパッチ療法を脳脊髄液減少症の治療法として確立し、早期に保険適用とすること。
3 脳脊髄液減少症の治療(ブラッドパッチ療法等)を、災害共済給付制度、労働者災害補償保険、自動車損害賠償責任保険の対象に速やかに加えること。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 安藤 俊威
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
国土交通大臣 あて
現在、中小企業を取り巻く環境は、消費の低迷、デフレに伴う低価格競争、急激な円高など、厳しい状況が続いている。7月から9月期の中小企業景況調査でも、中小企業の業況は、引き続き持ち直しの動きが見られるものの、製造業が弱い動きを示すなど依然として厳しい状況にあることが示されている。
このような状況に対し、政府の経済対策は逐次投入の手法であり、景気回復への明確な方針を全く示すことはなく、「政策の予見性」が欠如していると言わざるを得ない。政府が行った為替介入もさしたる効果を生むことはなく、このまま円高を放置すれば、製造業を中心とした中小企業の減益がさらに深刻化し、産業の一層の空洞化が懸念される。
一方、中小企業金融円滑化法及び緊急保証制度が来年3月末で時限を迎える。中小企業にとって最も重要な資金繰り支援が打ち切られることにより、資金繰りが悪化することになれば、事業が衰退し雇用にも影響する。このことはさらなる景気後退を招くことにもつながる。
よって、国においては、次の事項について、切れ目のない中小企業支援及び金融支援策を早急に決定し実施するよう強く要望する。
1 中小企業の資金繰り支援策として、平成23年3月で期限切れとなる中小企業金融円滑化法と緊急保証制度を延長し、保証枠を拡大すること。
2 成長分野の事業に取り組もうとする中小企業を支援するため、官民ファンド(株式会社産業革新機構)を有効に活用し、リスクマネーの提供を積極的に行うこと。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
財務大臣
経済産業大臣 あて
平成12年に地方分権一括法が施行されて以来、国と地方は対等、協力の関係へと大きく転換し、地方の自主性、自立性が高まるとともに、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に向け、地方政治の責任は一層重くなってきている。
このような中、有権者が候補者の政策等を知る機会を拡充するため、平成19年の公職選挙法改正により、地方公共団体の長の選挙については、候補者の選挙運動のためのビラを頒布することが可能となったものの、二元代表制の一翼を担う地方議会議員の選挙では、候補者の選挙運動のためのビラを頒布することが相変わらず禁止されており、有権者が議員候補者の政策を選挙期間中に知る手段が十分とは言えない状況にある。このことは、国政選挙及び地方自治体の首長の選挙における取り扱いと比べて、著しく均衡を欠く状況にある。
また、現在は選挙期間中に議員や首長の候補者のホームページ(ウェブサイト)を更新することが認められておらず、情報を得るための最も身近な手段の一つであるホームページ(ウェブサイト)を有権者が十分に活用することができない状況にある。
よって、国においては、平成23年の統一地方選挙までに公職選挙法を改正し、次の項目を実現するよう強く要望する。
1 地方議会議員選挙の選挙期間中のビラの配布を可能とすること。
2 地方議会議員、首長の選挙期間中のホームページ(ウェブサイト)の更新を可能とすること。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣 あて
警察庁の統計によると、平成21年の自殺者数は12年連続で3万人を超え、本県においても宮城県自殺対策推進会議を設置するなどの自殺予防に関する対策を講じているものの、平成21年の県内における自殺者数は658人に上るなど、依然として高い水準にある。
そのような状況の中で、自殺者の遺族は、近親者の自殺という行為により傷ついているだけではなく、自殺に対する社会的な偏見や差別により、尊厳や生活の平穏さを侵され、場合によっては不当に高額な損害賠償責任を負わされる等、いわゆる二次被害と呼ばれる物心両面にわたる社会的な不利益を受けるおそれにさらされている。
自死遺族の尊厳と生活の平穏を守り、このような二次被害を防ぐためには、自死遺族に対する身体的、精神的、社会的に一元化した実効性のある総合的な対策を講ずる必要がある。
よって、国においては、次の事項について早急に対策を講ずるよう強く要望する。
1 国の自殺対策推進会議に自死遺族当事者が参画することにより、自死遺族の声を自死遺族支援に反映できるようにすること。
2 すべての自死遺族が偏見から解放され、分け隔てなく社会に参加でき、誰もが尊厳を持って暮らすことのできるよう、総合的な支援対策を講ずること。
3 自殺者、自殺未遂者及びその親族の二次被害を防止するために、「二次被害者保護法(仮称)」の制定に向けた取り組みを推進すること。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
厚生労働大臣 あて
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、致死率の高い「成人T細胞型白血病(ATL)」や進行性の歩行・排尿障害を伴う「脊髄疾患(HAM)」を引き起こす。国内の感染者数(キャリア)は百万人以上と推定されており、毎年約千人以上がATLで命を落とし、HAM発症者は激痛や両足麻痺、排尿障害に苦しんでおり、いまだ根本的な治療法は確立されていない。
現在の主な感染経路は、母乳を介して母親から子供に感染する母子感染及び性交渉による感染であり、そのうち母子感染が六割以上を占めている。このウイルスの特徴は、感染から発症までの潜伏期間が40年から60年程度とされ、期間が極めて長いことである。そのため、自分自身がキャリアであること知らずに子供を母乳で育て、数年後に自身が発症して初めて我が子に感染させてしまったことを知らされるケースがある。
平成22年10月6日、厚生労働省は、総理官邸に設置された「HTLV-1特命チーム」の決定を受け、HTLV-1抗体検査を妊婦健康診査の標準的な検査項目に追加し、妊婦健康診査臨時特例交付金に基づく公費負担の対象とできるよう通知を改正し、各自治体に発出している。同チームでは、正しい知識と理解の普及、予防・治療の研究開発、相談診療体制等についての総合的対策の検討を行っているが、関連施策の確実な推進が望まれるところである。
よって、国においては、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に係る総合的な対策に関して、以下の事項について早急に実現するよう強く要望する。
1 医療関係者や地域保健担当者を対象とした研修会を早急に実施すること。
2 HTLV-1母子感染対策協議会を全都道府県に設置し、検査体制、保健指導・カウンセリング体制の整備を図ること。
3 感染者及び発症者の相談支援体制の充実を図ること。
4 感染者及び発症者のための診療拠点病院の整備を推進すること。
5 発症予防や治療法に関する研究開発を積極的に推進すること。
6 国民に対する正しい知識の普及と理解の促進を図ること。
7 発症者への支援、福祉対策を推進すること。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣 あて
中等教育課程において、日本と諸外国の関係を適切かつ正確に指導していくことは、子供たちが今後我が国の一層の国際化に対応し、国際社会における我が国の立場を理解していく上で重要であり、教育現場における教材はそのかなめとなるものである。とりわけ我が国を取り巻くアジアの成り立ちと現状を正しく伝えていくことは重要視されなければならない。
現在、中学校社会科で使用されている地図帳には、中国と台湾の関係について正確とは言えない記述がある。例えば、ある地図帳にはかつて我が国の領土であった台湾について、「1945年に中国へ返還」という記述がなされているが、我が国は1951年のサンフランシスコ平和条約によって台湾に関する主権を放棄しているのであり、事実関係においても歴史的経過においても誤りがある。また、我が国が主たる地域と位置づけている台湾の人口や国土面積の統計数値などが何の注釈もなく中国に含まれていることも誤解を招く。
なお、台湾の帰属に関するいわゆる台湾問題について、政府は1972年の「日中共同声明」において、中華人民共和国政府を唯一の合法政府と認め「一つの中国」の立場を取り、かつ、「台湾の領土的な位置づけに関して独自の認定を行う立場にない」ことを公式見解としているが、我が国の国益から、帰属問題は中国と台湾が平和的話し合いで解決することが望ましいとしていることは、重要な観点である。
中国と台湾は、近現代においてさまざまな経過をたどって今に至っており、我が国は現実的な対応を取りながら関係を構築してきている。昨年公布された改正入管法による新たな在留管理制度において、台湾出身者の新しい在留カードの国籍・地域欄に「台湾」と表示できるようになったこともその一つのあらわれである。このようなとき、事実や実態と異なる内容の教材が教育現場において使用されることは、我が国の歴史について正しい知識が得られないばかりか、我が国にとって今後も重要な隣国である中国・台湾に対する誤った認識と国際観を抱くことにつながり、国際関係の適切な理解を阻害するものである。
よって、国においては、教科書発行者に対し、歴史的事実関係と中国及び台湾の実態に即した適切な記述に是正するために必要な措置を講ずるよう、強く要望する。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月16日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
文部科学大臣 あて
我が国の第一次産業は、農林漁家等の経済活動として暮らしを支え、国民に安全・安心な食料を供給するとともに、食品加工や観光等の各種産業とのつながりも深く、地域経済の振興にも貢献している。また、国土・環境、地域社会、生物多様性の維持保全や伝統文化の継承といった多面的な機能も有しており、国家の安定的な発展に大きな役割を果たしている。
しかしながら、今日の第一次産業を取り巻く状況は、従事者・担い手の減少や高齢化の進行、販売価格の低迷による経営の悪化、耕作放棄地の増加等、将来の食料自給に大きな不安を感じざるを得ない厳しい状態にある。さらに、今後の世界人口の増加による食料危機も危惧されている。
このような状況の中、政府は今年3月に新たな「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定し、その中で、「国民に対する国家の最も基本的な責務として、食料の安定供給を将来にわたって確保していかなければならない。」とうたっている。さらに、食料自給率においても、供給熱量ベースで平成20年度の41%を平成32年度には50%まで引き上げることを掲げている。これは主権国家として、国民の命を守るという意味において、最も基本とするべき考え方である。
一方で、政府は、11月9日、「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定し、米国・豪州など九カ国が加盟交渉中のTPPについて、関係国との協議を開始することを決定したところである。このTPPは、関税撤廃の例外を原則認めない貿易自由化を目指す協定であり、TPPへの参加は、第一次産業への壊滅的な打撃、地域経済の衰退や農山漁村社会の崩壊、国土の荒廃等、我が国に多大な影響を及ぼすことは必至である。
農林水産省は、我が国がTPPに参加した場合の影響を試算しているが、米や麦はほとんどが外国産に置き換わり、牛肉や豚肉についても生産量が約4分の1に減少するという厳しい試算となっており、結果として食料自給率も14%程度まで下がるということを示している。
農業産出額約1,900億円のうち、米と畜産で1,500億円ほどを占める本県としては、我が国がTPPに参加することとなれば、水田農業や畜産を初めとする農業生産のほとんどが存亡の危機に直面し、自然豊かな県土も維持不可能となるなどの危機的状況がもたらされ、地域経済及び地域社会の受ける影響ははかり知れないものがある。
よって、国においては、「食料・農業・農村基本計画」の掲げる「国民全体で農業・農村を支える社会の創造を目指す」という考え方のもと、国民の命を支える食料の安定供給と豊かな国土の保全を損なうことのないよう国民的議論が必要であり、また、合意もないまま拙速にTPPに参加することのないよう強く要望する。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年11月25日
宮城県議会議長 畠山 和純
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
外務大臣
農林水産大臣
経済産業大臣 あて
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