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「宮城県美術館コレクション散歩」は、美術館の所蔵作品や収蔵作家を素材に、毎回角度と切口を変えたテーマを設定してお話しする講座です。今回はその第2回目として、近代美術の歴史の中で同じ環境を共有し、同時代的に活躍した作家を2名ずつピックアップして比較対照します。
本講座は、平成22年度みやぎ県民大学の一環です。
受講申込受付は8月28日で終了しました。
「高橋由一vs.黒田清輝」 ―脂派と紫派― 講師:有川幾夫(宮城県美術館副館長)
高橋油一《宮城県庁門前図》(部分)当館蔵
黒田清輝《湖畔》東京文化財研究所蔵
明治26年(1893)は、洋画家・黒田清輝がフランス留学から帰国した年です。このとき高橋由一は65歳、明治洋画の基礎を築いたその人生は、余命1年を残すのみとなっていました。紫系統の色を多用して光と空気を表現する黒田の明るい画風は、「紫派」の異名を得て急速に広まります。一方、暗褐色を基調とした旧来の画風は「脂派」と呼ばれ、日本洋画には以後、二つの潮流の対立が生まれるのです。その代表として、高橋由一と黒田清輝をとりあげ比較します。
「佐藤忠良vs.舟越保武」 ―リアリズムと信仰と― 講師:三上満良(宮城県美術館総括研究員)
佐藤忠良《帽子・夏》当館蔵
舟越保武《原の城》当館蔵
宮城県美術館の北庭に面した一角には、舟越保武のブロンズ彫刻を代表する一点である《原の城》が設置してあります。佐藤忠良の作品は同記念館で広く紹介していますが、東北の出身である舟越保武も当館の重要な収蔵作家の一人です。二人は東京美術学校(現東京藝術大学)の同窓生で、戦前より国画会・新制作派協会(1951年新制作協会と改称)などで行動を供にし、同じく日本の具象彫刻を代表する存在となります。二人の作品の共通性と差異についてお話しします。
「恩地孝四郎vs.田中恭吉」 ―『月映』の青春― 講師:和田浩一(宮城県美術館上席主任研究員)
恩地孝四郎《叙情五種 あかるい時》当館蔵
田中恭吉《冬虫夏草》当館蔵
『月映』(つくはえ)は、大正3年(1914)から翌年にかけて計7冊刊行された詩と版画の雑誌で、宮城県美術館ではそのうち4冊を所蔵しています。この雑誌に携わり作品を掲載したのは、恩地孝四郎と田中恭吉、そして藤森静雄の三人です。いずれも20歳代前半の画学生でした。木版の技術としては未熟ながら、内面のほとばしりを初めて直截に表現した熱意と純粋さにおいて、『月映』は日本近代版画の青春を象徴する存在です。今回は恩地と田中の仕事を対照しながら、両者の作品の特徴を紹介します。
「横山大観vs.平福百穂」―理想か写実か:近代日本画の争点― 講師:庄司淳一(宮城県美術館総括研究員)
横山大観《後赤壁》(部分)当館蔵
平福百穂《猟》 (部分)当館蔵
近代の日本画は、「東洋の理想」と「西洋の写実」という対立軸をめぐって展開して来ました。この対立の様相を考える上で、横山大観と平福百穂は格好の組み合せです。明治時代後半、東洋の歴史・神話・伝説などに取材したロマンティシズムあふれる大観ら日本美術院の作品を、あたかも全面否定するかのように、百穂ほか数名の青年画家たちは、街の雑踏や近郊の田園風景を描いて対抗しました。明治から昭和初期までの二人の作品を比較します。
宮城県美術館アートホール
(佐藤忠良記念館地階)
電話または当館受付にて
Tel:022-221-2111
各回ごとの受講も可能ですが、できるだけ4回連続での受講をおすすめします。
8月28日(土曜日)まで
60名
各回とも90分程度
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