メルマガ・みやぎ 応援職員の声No.4
応援職員の声 ・・・森林整備課
宮城県及び県内の被災沿岸市町は、震災からの復興事業に携わるため、全国の自治体からたくさんの応援職員を派遣していただいています。技術職の方を中心に、ピーク時には約1,000人、現在も約760人の応援職員が県内各地で事業に取り組んでいます。
このコーナーでは、震災復興業務に携わっている応援職員の方々にインタビューを行い、復興の進ちょくや宮城の生活で新鮮に感じたエピソードを通し、「宮城の今」をお伝えします。
今回は、徳島県から派遣され、県庁の森林整備課で主に保安林の管理業務に携わる村上英司技術主査に話を伺いました。
- 編集部

徳島県職員を定年退職後、任期付き職員として徳島県から応援派遣いただいていると伺いました。宮城に来ることになったきっかけを教えてください。
- 村上さん
宮城県庁に派遣されてから今年で2年目になります。震災直後から、復興の支援をしたいと思っていましたので、常々上司には、いつでも派遣で宮城に行けると言っていました。退職する年の11月頃に、次年度も徳島県から宮城県に応援職員を派遣することが決まり、私に派遣の声が掛かりました。家族に相談せずに宮城に派遣されることを決めてしまったので、妻にはとても怒られてしまいましたが…(笑)
- 編集部
森林整備課では、どのような業務に携わっていますか。
- 村上さん
- 主に保安林の解除手続き業務を担当しています。保安林は、山崩れを防いだり、洪水や渇水を緩和し、水質を浄化したりなど、私たちの暮らしを守るために特に重要な役割を果たしている森林のことで、国や県が保安林を指定しています。東日本大震災により津波で流されたものや、防潮堤の建設等に伴い保安林以外の用途に転用しなければならない保安林について、その指定を解除する事務が私の仕事です。
- 編集部
解除の作業は、震災があったから増えているのでしょうか。
- 村上さん
復興に向けて前に進む中で、防潮堤や避難道路の建設など、理由はさまざまですが、震災を原因とする解除件数は確実に増えています。震災前通常は年間10件程度でしたが、昨年度は約30件の手続きを行いました。
- 編集部
手続きにはどのくらいの時間がかかりますか。
- 村上さん
保安林の指定の目的や土地の所有者によって手続きの時間が異なります。例えば県や市町、個人が所有する保安林の解除の場合は3~6カ月程度、国が所有する保安林であれば林野庁との調整もあるため約1年かかります。現地確認や書類の整備に時間を要するため、簡単に進めることのできない業務です。また、一つ一つの案件で保安林を解除して安全面で問題がないか、緊急性はどうかといった判断が求められます。解除業務は、ピーク時より落ち着いてきていますが、震災前に比べると、相変わらず件数は多いです。これから工事を始める案件もまだまだありますので。
- 編集部
出張で保安林区域の工事現場に行くことはありますか。
- 村上さん
現地確認には行きますが、庁舎内で事務作業をすることがほとんどです。初めは、宮城の地形や地質、森林の状況が分からなかったので、保安林の指定を解除する土地のイメージが浮かびませんでした。土地の状況が分からないと解除の手続きを進めることができませんので、休日は、現場を周り、土地の状況を把握してきました。週末は県内をたくさん回りましたので、もしかしたら宮城県民の皆さんよりも宮城に詳しくなっているかもしれませんね!
- 編集部
震災前に宮城に来たことはありますか。
- 村上さん
約30年前に来たことがあります。当時、徳島県庁のバレーボール部に所属していたことがあり、岩手県の一関で試合をした後に、仙台の宿に一泊しました。そこで初めて生のホヤを口にしたのですが、私は残念ながら苦手な味で食べることができませんでした。生ホヤが好きな方ももちろんいらっしゃいますが、人の好みはそれぞれですね。蒸したホヤはおいしく食べられました。
- 編集部
震災後、沿岸部や被災地の様子はご覧になりましたか。
- 村上さん
仙台市の荒浜や石巻市の大川小学校など沿岸部を中心に回りました。改めて被害のすごさを感じています。震災当時、テレビで被害の状況や津波の威力を見ていました。これが本当に起こっていることだと思えませんでした。また、復興のため同じ時期にたくさんの建造物が出来ました。何年かすればきっと、同じ時期に構造物のメンテナンスが相次ぎ、県や市町村の職員が対応に追われるのではないかと想像してしまいます。
- 編集部
職場の環境はどうですか。
- 村上さん
職場の皆さんにはご迷惑を掛けることもありますが、とても楽しく仕事をさせていただいています。月に一回ほど、班長号令のもと重要な班会(ふつうの飲み会です。)を開き、良い人間関係が築けていると思います。
- 編集部
宮城に来て、驚いたことや感心したことはありますか。
- 村上さん
電車やバスを待つ時に、乗車客はきれいに整列して並んでいることに驚きました!関西の人は並ぶ習慣があまりないので。東北人は寡黙で真面目で、大らかな人が多いと思います。4月に仙台の街中で行われた羽生結弦選手のパレードに私も行きましたが、ゴミが一つも落ちていなかったとニュースで見て、宮城の良さを感じました。
もう一つ感心したことがあります。宮城県庁のエレベーターには、乗り込もうとする人を見落とさない工夫として、扉にミラーが付いています。相手に対する思いやりが素晴らしいと思いました。
- 編集部
宮城県への派遣を経験し、今後取り組みたいことがあったら教えてください。
- 村上さん
私は徳島県庁を退職しているため、職場に戻って宮城での経験を行政に生かすことはできないと思いますが、徳島にも遠からず「南海・東南海地震」が来るといわれているので、防災意識を地域に広げていきたいと思っています。また、宮城を第3のふるさととして、今後も復興が進むことを強く願っています。
ちなみに第2のふるさとは大学時代を過ごした沖縄です。
編集部から一言
私たちが普段当たり前のように思っている安全で快適な暮らし。その裏には、水源の涵養(かんよう)や山地災害の防止などをはじめとする森林の働きがあります。村上さんから保安林の役割や制度を伺い、森林資源の適正管理の重要性を改めて認識することができました。明るく気さくにインタビューに答えてくれた村上さん。笑顔がとても印象的でした。