【集落情報発信支援員コラム#14】登米市「伊豆沼農産」の農泊及びグリーン・ツーリズムに関する取り組み紹介
地域の連携を大事にしながら、生産者に近い農泊体験を
登米市迫町にある伊豆沼農産は、伊豆沼のほとりに位置し、直売所やレストランで人気。すぐそばのラムサール広場に行けば、可愛いヤギたちに出会えるほか、キャンプが可能なエリア、生ハムや郷土料理などの体験交流ができる施設もあり、生産者に近い農泊体験の提供も大切にしています。
登米市の中ではもちろんのこと、主に県北エリアにおける農泊、グリーン・ツーリズムにおいても今や欠かせない存在の伊豆沼農産。近隣市町村との連携や地域資源・人材の活用も積極的に行う伊豆沼農産の取り組みをご紹介していきます!
進化し続ける伊豆沼農産
伊豆沼農産は、理念に「農業を食業に変える」を掲げ、1988年の創業以来養豚や米・果樹などの生産、ハム・ソーセージなどの食料品製造業を行っています。今では「伊達の純粋赤豚」や「伊豆沼ハム」などで有名となりました。また、直営の「くんぺる直売マーケット」や「くんぺる農場レストラン」の運営、体験教室の実施なども含め、多岐にわたる事業を展開してきました。直売所では、地元で採れる食材を生かしたジェラートも人気です。

くんぺる直売マーケット&くんぺる農場レストラン

ブルーベリー畑
最近では、令和7年に一棟貸し宿泊施設「伊豆沼レイクヒル天上」もオープン。伊豆沼湖畔の高台に建つ平屋の古民家で、昭和の懐かしい佇まいでありながらも、水回りのリニューアルもされて快適な空間となっています。庭から一望できる田園風景にも癒されながら、家族やグループで、まるで暮らしているかのように気兼ねない農泊時間を過ごせるのが魅力。登米市の新たな農泊スポットとしてすでに活用されています。

伊豆沼レイクヒル天上・外観

素敵な古民家空間で癒しのひとときを
伊豆沼農産の直売所・レストランからも、歩いて約10分、車だとあっという間の距離に位置しており、JR東北本線の「新田駅」から近いという利便性もおすすめの一つです。レストランの豊富なメニュー(とんかつやポークステーキなど素材の旨味を感じられるものばかり!)にも惹かれてしまいますが、宿泊の際はお庭でできる伊豆沼農産のBBQプランもおすすめですよ。代表格である赤豚の焼肉、オリジナルのソーセージ、地元のお野菜、地元のお米のおにぎり、とボリューム満点セットです。

地元食材の上質なBBQが楽しめます

レストランのメニューも捨てがたい!
教育旅行やインバウンドの受け入れでも大活躍!
そんな伊豆沼農産が主体となりつつ、登米市、そして東京の企業の三者で2017年に立ち上げたのが「食農体験ネットワーク登米協議会」です。体験プログラムの中でも、手作りウインナーや豚まんなど伊豆沼農産らしい食体験が人気ですが、その他にも郷土料理のはっと作り体験や季節の収穫体験、ラムサール条約登録湿地でもある伊豆沼を中心に地域の自然についても学べる体験も企画しており、教育旅行の受け入れも盛んです。

大人気のソーセージづくり体験

地元のお母さんたちに教わってつくるはっと
インバウンドの取り組みも力を入れており、実際に主にアメリカから長期滞在に訪れていた高校生たちの体験受け入れの際にご一緒させていただきました!このツアーに希望して集まる、今回がはじめまして同士という高校生と引率の大人たち。数週間日本に滞在しながら交流を深めていくプログラムの中で、3日間分を伊豆沼農産でコーディネート。1日目が農家さんと交流しながらの収穫体験、2日目が地元高校生との文化交流、3日目が近隣市町村への学び学習という構成です。

久保園芸さんのきゅうりハウス見学

きゅうりのみずみずしさに驚く皆さん
収穫体験は、登米市内で農業を営む久保園芸さんへ。体験ハウスの中で、代表の久保さんが「もいで食べていいよ」と言うと、最初は戸惑っていた皆さんも、一人もいだら続々ともいで、まず一口“パリッ”。「お口に合いますか?」と久保さんが聞くと、もぐもぐしながらみるみる目を輝かせ、さらに“バリッ”“ボリッ”ときゅうりに齧り付きました。聞けば、アメリカでもきゅうりはあるけれど、大規模農業が多いためこうして手で採る経験はしたことがなく、普段食べているきゅうりもこんなにみずみずしくはないとのこと。「きゅうりだけで美味しいと思うのは初めて!」と感動していました。

ちびきゅうりのお漬物試食も初体験でドキドキ

帰る頃にはすっかり久保さんの虜に
コーディネートしながら大切にしていること
伊豆沼農産の中で、これらの体験や農泊事業のコーディネートを担っているのが、取締役の佐藤裕美さん。裕美さんが大切にしているのは、自分のところ、自分のまちだけで全てを完結させてしまうのではなく、地域の人材や拠点、さらには近隣市町村とも連携しながらプログラムを開発し、人を呼び込むことで農村の活性化、さらには自立していくことを目指しているということ。教育旅行にお邪魔した際も、この日は70人以上の受け入れだったこともあり、お隣栗原市の皆さんとも連携して実施していましたが、入村式にやってきた協力してくれる農泊実践者たちの多さに驚きました。

左から2人目がコーディネートしている裕美さん

教育旅行にも地域の実践者がたくさん協力!
以前のインタビューで、裕美さんは「とにかくやってみないことには、自分たちも研鑽されないし、私たちの信じる“価値”に自信を持つためにも、もっともっと実践したい。そのためには体制を整えたり、ここでこんなことできますよって営業かけたりというコーディネートも大事だけど、何よりも地域の皆さんとのコミュニケーションを大切にしないと成り立たないと思う」とお話していました。そういう想いでお声がけして出会った皆さんだから、裕美さんがかける声も、かけられる声も、いつも「ありがとう」で溢れています。

宿泊者の食事準備に協力するお母さんたち

教育旅行の受け入れに協力する「民泊たまやま」さん
アメリカからの体験受け入れ3日目は、こちらもお隣の南三陸町へ。せっかく数日滞在してくれるなら、少しでも震災のことを知ってもらいたいという想いから、震災伝承施設でのラーニングプログラムと震災復興祈念公園の語り部ツアーをプログラムに入れ、普段から連携している地元の語り部に依頼しました。通訳を交えながらも当時の話や伝えたいメッセージを届け、参加者からも積極的な質問が出ました。「私たちの当たり前の日常や経験してきたことの中に、東北・宮城県北として魅せられるものや伝えていけるものがあると思っています」という裕美さん。伊豆沼農産をはじめ、それに共感し協力し合う皆さんで提供する農泊時間は、きっと誰の心にも残るものになることでしょう。

南三陸町震災復興祈念公園を案内

地元の語り部の話を聴く参加者の皆さん
執筆者:宮城県農山漁村集落情報発信支援員-大場黎亜
掲載日:令和8年9月1日

