【集落情報発信支援員コラム#1】入谷の里山活性化協議会(南三陸町)
「きっとあなたも虜になる、世代を超えて輝くチーム入谷の魅力」

県北の沿岸部に位置する南三陸町。“海”のイメージを持たれる方が多いのではないかと思われますが、実は里山も魅力的。町内で唯一海に面していない地区の「入谷」は、美しい里山の景観と豊かな森や田畑が広がる農村地区です。
かつては仙台藩養蚕発祥の地として絹の生産で栄え、今でも繭細工が盛ん。現在の主な産業は、米・野菜・果物などの農業と、牛や豚などの畜産業、山を活かした林業です。今回は、そんな入谷の魅力をご紹介!
震災後、沿岸部を支えてきた内陸地「入谷」
町内、海に面する志津川・歌津・戸倉の3地区と異なり、東日本大震災で津波の直接的な被害が少なかった内陸部の入谷地区。しばらくは沿岸部の復旧優先という雰囲気の中、外部からのボランティアを受け入れながら沿岸部を支えてきた地域でもあります。
しかし、気付けば地域のグリーンツーリズムを盛り上げてきた世代も高齢に。三陸道の延長もあり、入谷を再び活性化させようという矢先にコロナ禍が立ちはだかりました。それでもめげずにいられたのは、コロナ禍でも秋に紅く色付いたもみじがあったから。「困難な中でも変わらず訪れる入谷の四季の美しさを伝えよう」と、再び地域の先輩陣が動き出しました。
地域の文化拠点である「ひころの里」に紅く色付いたもみじ
次世代を育成しながら入谷らしい体験を
補助金などを得ながら、まずは地域の人材育成に力を入れてきました。現在「入谷の里山活性化協議会」では、グリーンツーリズムのインストラクター・コーディネーターの認定を受けたメンバーが中心となって活躍しています。
また、コロナ禍対策の環境整備もしつつ、時代のニーズに合わせた新たな体験コンテンツ開発などに力を入れていきました。夏から秋にかけては収穫体験や食、里山の自然を楽しんでもらえる体験が主で、収穫物の少ない冬から春にかけては、山歩きや林業体験などを用意。生産者や地域住民と共に旬を味わいながら交流することで、ファンが増えて、リピーターになってくれる方もいます。
多世代が集まるグリーンツーリズムの体験プログラムを提供
世代を超えて交わる、チーム入谷の魅力
また、通年で提供しているのが、地域の文化に触れる体験やものづくり体験、トレイルなどの企画。最近力を入れているのは、地域の文化施設「ひころの里」を活用した落語会やあえて地域の集会所などで膝を交えるように鑑賞する、里山をテーマにしたドキュメンタリー映画の上映会などの文化交流企画です。
入谷地区の魅力は、コンパクトなエリアに、生きるために必要な資源と人材が揃っていること。協議会の構成メンバーで、ものづくりや飲食、農林体験、宿泊などを分担しながら回しており、まさに「チーム入谷」がフル稼働!そして何よりも、若者から地域の大先輩まで、世代層が厚く仲が良いことが、地域のパワーになっています。
「ひころの里」の松笠屋敷で開催した「ひころde落語会」の様子
古き良きを守りながらも、新しい風を
育ててもらった若い世代は「この地域の良さを伝え続けたいし守りたい」と意気込み、先輩陣は「若い人たちに学べることは学んで、俺たちが培ってきた知見をあまり押し付けないのがポイントだな」と嬉しそうに話します。
都度めぐり合わせるご縁やチャンスを大事に、地域にある「古き良き」を守りながらも新しい風を取り込んで前進してきた入谷地区。昨年度は、協議会の取り組みが認められ、東北農政局の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」にて奨励賞を受賞するなど、今勢いに乗っています。活動の詳細は「入谷の里山ねっと」(https://iriyanosatoyama.com/)をご覧ください。あなたも入谷の魅力の虜になるはず!
「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」にて奨励賞を受賞
執筆者:宮城県農山漁村集落情報発信支援員-大場黎亜